書籍詳細
金融王の寵愛〜伯爵と仔ヤギと花嫁と〜
ISBNコード | 978-4-86669-209-8 |
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サイズ | 文庫本 |
定価 | 754円(税込) |
発売日 | 2019/06/18 |
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内容紹介
人物紹介
五十瀬末明(いおせ ほのか)
牧場を再開する夢を叶えるため奮闘する大学生。
アレクシス
銀行のオーナーで、フィンランドの貴族。末明と出会い、一目ぼれして…。
立ち読み
「きみのことが大切だから」
吐息が頬をかすめ、眦にキスを落とされる。
今度は、抗わなかった。
それどころか、おずおずと広い胸に手を添える。それを肩に滑らせて、またも無自覚のままにキスをねだる。
「……んっ」
軽く啄んで、唇が離れる。
だが、それ以上を期待した末明の耳に、あまりにも紳士な言葉が届いた。
「疲れただろう。今日は帰るよ」
明日また来ると、力強い腕が離れていく。脱いでソファに放っていたスーツのジャケットを取り上げ、長身が背を向ける。
末明の胸に、唐突な焦燥感が襲った。
「待って!」
アレクシスが腕にかけたジャケットの袖口を掴んで引き止める。
「末明?」
「帰らないで! 傍にいてください。僕……」
今日は、ひとりでいたくないと、掠れる声で訴える。
ユキちゃんもいない。ひとりで、夜をすごすのは嫌だ。両親を亡くし、祖父母を亡くし、ひとりぼっちになってしまった日のことを思い出す。
「そんな顔で、そんなことを言うものじゃない」
「……え?」
なにを咎められているのかわからなくて、末明は涙をたたえた長い睫毛を瞬かせた。末明の痩身を今一度腕に抱き寄せながら、アレクシスは苦笑する。
「誘っていると思われる」
気をつけたほうがいいと、艶を含んだ揶揄。その意味を理解して、末明は頬を赤らめる。
「期待に添えなくて申し訳ないが、私はそれほど紳士ではない」
この状態の末明を、ただ腕に抱いているだけでは終われないと言う。末明は、アレクシスの碧眼を見上げ、彼が手にしたスーツのジャケットを奪って床に落とす。そして、自らその背に腕をまわした。
「それでも、いいです……」
アレクシスの碧眼が、ゆるり……と見開かれる。
「それでも、いいから……っ」
ひとりにしないでほしいと訴える。
末明を抱くアレクシスの腕に、力がこもった。
「アレク……」
今度は、触れるだけでは終わらなかった。
軽く触れて離れるかに思われた唇が、深く合わされて、末明の口腔を貪る。
「……んんっ!」
応え方もわからないままに身を任せ、その心地好さに思考を停滞させる。耳朶に甘く、「寝室は?」と訊かれて、「二階」と答えていた。
身体がふわり……と浮いた。
異性のように扱われても、そんなのもう、どうでもいいと思った。
アレクシスに、もっと近づきたい。もっとずっと傍にいたい。そう思う気持ちのほうが、もはや強かったのだ。
ちゃんと掃除してベッドメイキングしておいてよかった……などと、現実的なことが頭を過ったのも一瞬のこと、ベッドにそっと下ろされた時点で、末明の頭は真っ白だった。
同性どころか、異性とだって経験がない。
祖父母と暮らした田舎の生活では、自然とヤギにまみれているだけの毎日だったし、大学に入って華やかな異性が周囲に増えたものの、末明のような洒落っけのないお子さまは相手にしてもらえなかった。
実のところ、末明に興味を示す女子学生も多かったのだが、飲み会にもコンパにも参加しないで牧場とヤギの世話に明け暮れていた末明とは、接点の持ちようがなかったのだ。
そんなこととはつゆ知らず、末明は自分はもてないのだと思い込んだまま、最近ではユキちゃん一色の生活になって、ますます同級生たちとは没交流になり、出会いのない生活を送っていたのだった。
だから、これからなにが起こるのか、知識として知ってはいても、経験がないがゆえに戸惑うばかりで、アレクシスにひしっとしがみついているよりほかない状況。
自身の肩口にぎゅっと縋りつく末明の指がガチガチになっていることに気づいたアレクシスが、その手をそっととって、指先にキスをした。
すると、スーッと身体の強張りが解けて、末明はようやくシーツに身体を沈ませる。
頬に瞼に眦に、やわらかなキスが落とされる。その心地好さに、最後に残った緊張も解けていく。
視界の先、アレクシスがネクタイのノットに指を差し込む。少し乱暴に襟元をゆるめる仕種が、末明の胸をドクリと粟立てる。
次いでもたらされたのは、すべてを奪いつくすキスだった。
何も知らない末明が抵抗を感じる隙を奪うかのようにもたらされた、激しい熱。力強い腕に組み敷かれて、末明は恐怖以上に恍惚を覚えた。
「ん……ぁっ」
キスは気持ちいい。身体中触れられるのも、くすぐったいけれど、嫌じゃない。けれど、パジャマの前をはだけられ、いつもは存在すら気にかけたことのない胸の突起をいじられて、ビクリッと肩を揺らした。
「あ……ぁっ」
嬲られる場所からじわじわと、未知の感覚が広がって、末明は痩身を震わせる。大丈夫だとあやすように、耳朶に首筋にキスが落ちて、初心な肉体の奥に眠る欲望を刺激した。
薄い胸に愛撫が落され、痩身がくねる。
不埒な手が、二十歳を超えてなお未成熟さを残したやわらかな肌を辿って、淫靡な熱を灯していく。
無意識にも、膝頭をすり合わせていた。そこに手をかけられ、太腿を開かれて、布の上から局部を探られる。
「や……ぁっ」
兆しはじめていることを教えられて、ビクリと腰を震わせる。身を縮こまらせる末明にかまわず、アレクシスはパジャマのズボンを下着ごと引き抜いてしまう。
膝を割られて、局部を曝された。
半ば頭を擡げた欲望が、先走りの蜜を滴らせていることに気づいて、末明は羞恥に身悶えた。
「や…だ、見な…で……っ」
隠そうとするのを阻まれ、更に大きく白い太腿を開かれる。なにをされるのかと、見開く視界のなか、幼さを残した欲望が、アレクシスの口腔に囚われた。
「ひ……ぁっ、あ……っ」
熱い舌が、欲望に絡みつく。腰の奥に溜まった熱が、一気に噴き出しそうだった。
はじめて経験する強烈な快感に耐えられず、末明はあっという間に欲望を弾けさせてしまう。「放して」と訴える間もなく、アレクシスの口腔に白濁を放っていた。
「あ……ぁ……っ」
解放の余韻にビクビクと細腰を震わせて、顔を隠すように身を捩る。アレクシスの舌が余韻を引き延ばすように欲望を舐って、それだけでまたトクリと弾けてしまった。
恥ずかしくて顔を上げられなくなって、枕を手繰り寄せようと手を伸ばすものの、「ダメだよ」と、大きな手に阻まれる。
「隠さないで」
両手首を頭上に拘束され、仰向けられて、間近に注がれる青い視線とぶつかった。
そこには、これまで見たことのない男の顔があった。
「あ……」
細められた碧眼の奥には、酷薄さすら感じさせる欲望が揺らめく。強い視線に射抜かれて、末明は痺れたように動けなくなってしまった。
末明の肌に掌を這わせながら、視姦するかのように青い視線を注ぐ。腹につくほどに反り返った欲望を指先であやし、緩急をつけた刺激で翻弄する。
「い、いや……だ、め……っ」
そんなふうに触れられたら、また弾けてしまう。恥ずかしくて「いやだ」と頭を振るのに、アレクシスは許してくれない。
大きな手で末明の欲望を弄び、羞恥と快楽に耐えられなくなってあふれる涙に、アレクシスは満足げな笑みを口許に刻む。
膝の内側から内腿に、淡く啄む愛撫を降らせ、快楽に震える欲望には触れないままに、後孔を露わにする。
「ひ……っ、あぁ……っ!」
入り口を指先に擽られた、次の瞬間には、滑った熱いものが触れて、末明は悲鳴にも似た嬌声を上げた。
「あ……ぁっ、ダメ……っ」
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