書籍詳細
オメガの純情〜砂漠の王子と奇跡の子〜
ISBNコード | 978-4-86669-282-1 |
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サイズ | 文庫本 |
ページ数 | 280ページ |
定価 | 831円(税込) |
発売日 | 2020/05/18 |
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内容紹介
人物紹介
レイ
22〜23歳。3歳の男の子を一人で育てているシングルマザーのオメガ。
ラシード
現国王の長子で王位継承権二位。自由奔放に暮らしているアルファ。28歳。
バドゥル
レイの子供3歳。
立ち読み
「厭?」
しかも、ラシードにまっすぐ顔を覗き込まれてそう問われると、いつまでも取り繕ったままでいるのは難しかった。
「厭——じゃない、ですけど」
「よかった」
気が変わらないうちにとでも言いたげな性急さで裸にされる。その後ラシードも衣服をすべて脱ぎ捨てたが、なにもかもあまりにちがっていて、知らず識らず見惚れてしまっていた。
「そんな目で見られたら困る」
だが、ラシードに指摘されて即座に視線を落とした。物欲しげに見えたにちがいないと思うと、恥ずかしさで居ても立ってもいられなくなった。
「あ、俺……やっぱり」
身を返す前に長い腕に囚われる。直接触られている部分が燃えるように熱く感じられた。肩口に押し当てられた唇には、目眩すら覚える。
「……ヒート、じゃないのに」
初めてのヒートの最中と同じ、いや、それ以上に身体じゅうどこもかしこも敏感になっているようだ。
「ヒートじゃないと、触らせてくれない?」
慌ててかぶりを振る。気になっているのは、自分がみっともない姿をさらしているのではないかと、そのことだった。
ラシードに失望されたら——きっとこれ以上ないほど傷つくに決まっている。
「……ラシードに、ラットがこないから」
結局、ラシードのせいにする。自分がヒートしていないのなら、ラシードも同じではないのか、と。
「僕? ヒートとかラットとか関係ない。僕は、きみが欲しいだけだ」
「——あ」
腰を押しつけられて、レイは息を呑む。ラシードの中心は硬く、熱く脈打っていた。
「レイは厭?」
もう一度同じ質問をされて、これ以上ないほど昂揚する。息苦しさに喘いでも、少しも余裕を持てそうにない。
「厭、なわけないです」
厭であるはずがなかった。ラシードの視線や手、指先の動きにすらときめいてしまう自分だから不安なのだ。
ラシード相手ではコントロールなんてできるはずもなく、みっともない姿をさらしてしまうのは目に見えている。
「呆れないで、ください」
硬い胸に抱き寄せられたレイは、祈るような気持ちでそう言う。実際のところ、すでに自身の身体じゅうに欲望が渦巻いていることに気づいていた。
「僕のほうこそだ。きみに触れたくてたまらない僕に呆れないでほしい」
「……そんなの」
唇にラシードの手が触れてきた。見つめられ、形を確かめるように唇を指先でなぞられて、ぞくぞくと背筋が痺れる。
明確な快感に逆らえるはずもなく、半ば無意識のうちに自ら唇を解いていた。
指の代わりに、今度は熱い舌がそっと触れてくる。何度か食まれ、舐められて、昂揚するあまり吐息がこぼれた。
「レイ」
やわらかな声で名前を呼ばれた。かと思うと、ラシードはガラス細工にでも触れるかのようにやさしく口を合わせてきたのだ。
「ふ……」
優しくすくうように舐められ、本能のままに応える。ラシードが口づけを深くしてきたのは、きっと自分がそう望んだからだろう。
ラシードの唇の甘さにレイは陶酔し、いつの間にか自分からしがみついていた。
「ラシー……ラ……」
口づけの合間に何度も名前を呼ぶ。息が上がり、キスだけで早くも我を忘れる。
「困ったな。これじゃあ、シャワーまでがすごく遠い」
そう言われてやっと本来の目的を思い出すような始末だった。
やめないでほしい。その思いを込めて、間近にあるラシードを見つめる。ヘイゼルの瞳は少し濡れていて、まさに宝石が輝いているようだ。
「だから、そんな目で僕を見たら駄目だ」
ラシードが喉を鳴らしたのがわかった、かと思うと、いきなり床から足が浮き上がった。
「ラシード……っ」
抱き上げられて向かったのはシャワーブース、ではなかった。普段自分がベッドメイクをしている主寝室のベッドだ。
そこへ横たえられ、見慣れない景色に目を見開いたのは、レイにしてみれば当たり前のことだった。なにしろラシードのベッドから見る景色だ。
鮮やかな色の天蓋。ドレープの美しいシルクのカーテン。でも、なにより美しいのは自分を見下ろしてくるラシードだ。
淡い色の双眸に吸い込まれそうだと思う。だが、
「もう待たない」
いい? と耳語され、ふたたび昂揚の波に呑まれる。いや、ラシード自身に、だ。
「……俺だって、待ちたくない」
勇気を出して正直に伝えるとすぐにまた熱い口づけが再開され、レイは夢中になって舌を絡めた。
「ふ……ぅんっ……ぁ」
ラシードの唇はなんて心地いいのだろう。頭のなかに紗がかかり、ヒート中でないにもかかわらずすぐに理性も思考も飛んでしまう。
懸命に応えていたレイだが、大きな手に胸を弄られてそれどころではなくなった。
「あ……やっ」
ましてや口に含まれ、舌で転がされてしまっては——必死で堪えようとしてもいやらしい声がこぼれ出て、羞恥心から逃げ出したい衝動に駆られる。
「待……って、くださ……っ」
ラシードの頭に手をやった。でも、それは失敗だったとすぐに気づかされる。
どういうわけか胸に抱え込む格好になり、とうとうレイは淫らな声を上げるはめになったのだ。
「レイ。厭がらないで」
「でも……俺……こんなの」
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