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かの侯爵令嬢に転生したので今度は絶対に生き残ります!

十帖 / 著
山下ナナオ / イラスト
ISBNコード 978-4-86669-293-7
定価 1,320円(税込)
発売日 2020/05/27
ジャンル フェアリーキスピュア

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内容紹介

私は誰より長生きしたいんだから、王妃になんて絶対なりません!
どたばたコメディ&たまにシリアスサバイバル物語、開幕。
通り魔に刺殺された前世を持つため、誰より長生きしようと目論む美貌の侯爵令嬢シエナ。だが、ある日「女遊びの激しい国王陛下を改心させてほしい」と父親に懇願されて大ピンチ。
危険渦巻く権力の中枢なんて絶対近付きたくない!
なのに渋々出向いた王宮で「俺の傷痕に触れた酔狂な女を手放すのは惜しい」と、隻眼の国王イザクから、まさかの求婚を受けてしまう。
おまけに玉座を狙う王弟一派の企みに巻き込まれて……?
私の安心長生き計画、一体どうなっちゃうの!?
「……俺を拒絶しない相手なら誰でもいいんじゃない。俺はお前がいい」

立ち読み

 瞬間、シエナの肌がゾワッと粟立つ。気配もなく現れた男に顔が強張った。
(……っ !?   さっきまでは誰もいなかったのに……!)
 人間、自分に危険が迫ると本能で察するものだ。シエナの中で警鐘が鳴った。たしか前世で殺された時も同じようなものを感じた。捕食される小動物の気持ちになったような、大きな手のひらで 顔面を覆われるような恐怖を……。
「侯爵令嬢はっけーん」
 フードの男はニタリと嫌な笑みを浮かべる。笑った口から覗く歯は数本欠けていた。
 シエナが暗がりへ一歩下がると、男は舌舐めずりしながら横揺れしてにじり寄ってくる。 「あれ? もしかして警戒されてる? そりゃそうか、俺はあんたが思ってる通り、悪い人間だ」
 男の言葉を無視し、シエナは最大限警戒しながら周囲の様子を窺った。
 武器になりそうなものは何もない。もし男が襲いかかってきたら、上体を低くし相手の顎を突きあげてから膝蹴りを顔面にぶちこむか――……。
 頭でそう計算する。だが、実際に身体が動くだろうか?
 頭の中で鳴り響く警鐘は激しさを増す。手が震えるシエナへ、男は夢見るように呟いた。
「しかしすごいなぁ、たまげるくらい綺麗だなぁ、あんた。星を溶かしたような色の髪、新雪のような肌、花の顔……どれも噂通りだ。それに実物は……」
 男はシエナへと曲がった鼻を近付け、わざとらしくスーッと匂いを嗅いだ。
「バラのような香り……。あんたマニアからすげぇ人気高いんだぜ? 死体愛好家からもな。それに美しい剝製にして飾りたいって話をよく聞くぜ? 殺して差しだせば膨大な金を手にできるだろうなぁ。いや、パーツごとに売った方が金になるか?」
「な……っ !? 」
 目をむくシエナを値踏みするように見つめてから、男は卑しい笑みを浮かべてまた一歩近付いてくる。目が血走っていて気味が悪い。
「あぁーいい女だからもったいねえよなぁ……。でも金になるなら殺した方がいいよな?」
 シエナの頰が恐怖で引きつる。人間離れした美貌だと言われるシエナだが、剝製にされて本当に人形のように飾られるのはごめんだ。
 ジリ……とまた一歩、シエナは暗がりへと下がる。膝が笑って上手く走れる自信がなかった。この危機を脱する未来が想像できない。
(何してるんだろう私……。誰よりも長生きしたいって今生ではあんなに気をつけていたのに、一時の油断でこんな状況に追いこまれるなんて……)
 でも前世でもそうだった。単調な日々は通り魔によって突然断ちきられた。
 あの日、もっと人通りの多い道を歩いていれば、近道と思って暗い道を選ばなければ、あの時間にあの場所を通らなければ、私に護身の術があったなら――……。
 身体をめった刺しにされている最中も、転生してからも、ずっとそう悔み続けた。それからずっと警戒していたのに、また危険な状況に追いこまれるなんて。己の馬鹿さ加減が嫌になる。
「怯える顔も絵になるけどよ……」
 男は恍惚とした息を吐きだしながら、懐から銀色に光る折りたたみナイフを取りだした。鈍い光を放つそれに、シエナの全身が凍る。
「苦痛で歪んだ顔はもっと綺麗なんじゃねえのか? なあ、侯爵令嬢さんよ」
 シエナの心臓が痛いほど鳴る。足に力が入らず、下半身がゴムになったように覚束ない。気持ち悪い。不安定に揺られているような気持ち悪さだ。男のナイフに映る自分の顔は前世と違うはずなのに、恐怖で歪む顔は刺殺されたあの時と同じようだ。
 シエナの息が上がる。額に冷や汗が滲んだ。内臓が一段下がったみたいな感覚がする。 「やめて……」
 シエナはうわ言のように言った。
「やめて、やだ来ないで……」
 フラッシュバックする、あの夜。寒くて凍える中、後ろからつけてきた男にいきなり襲いかかられた。
 泣きながら逃げたけれど恐怖で足はもつれ、声が思うように出ず助けも呼べなかった。転んだところで後ろから背中を刺され、焼けるような痛みに呻いている間に仰向かされると馬乗りになられた。月明かりで見えた男の顔は狂気に染まり笑っていた。泣いて懇願しても決して止めてはくれず、鋭い切っ先を埋めこまれ身体のあちこちが悲鳴を上げた。
 あの時の恐怖をまた体験するのかと思うと、涙で視界が滲む。
 今になって、初対面でナイフを投げつけてきたニフは本気でシエナを殺すつもりなどなかったのだと気付いた。ニフに殺気がなかったからあの時は動けたものの、今は恐怖でその場に足が縫い留められてしまったように動かない。
 現世では誰より生き残るために努力してきたのに、死の恐怖の前では何もかも無力だ。
「やだ……」
 涙声でシエナは首を振った。足がもつれてその場に尻もちをつく。あの日の恐怖がシエナを苛め、鎖のようにその場へ繫ぐ。死の気配を感じ、シエナの瞳から涙が零れた。
(いやだ――……誰か、誰か……!)
 誰かって、誰だ。
 絶望がシエナへ語りかける。前世では誰も助けてはくれなかった。助けなんて来ない。凍える中、一人痛みに苛まれて一生を終えた。
 誰も救ってはくれない。助けてはくれない。だから必死で、生き残る術を今生では学んだ。でも、こんなところで、こんなに呆気なく潰えてしまうのか。
(……また……一人孤独に死んでいくの……?)
 こんな掃きだめのような場所で、誰にも看取られずに。
「死にたくない……」
 震える手で、堪えるように地面を引っかく。あまりの力に爪が一枚はがれた。男は舌でナイフを舐めてから「いい顔だぁ……」と囁くと、ナイフの切っ先をしっかりシエナに定めた。
「や……っ」
 顔に寝かせたナイフを当てられ、シエナが短く息を呑む。頰骨から滑るように上がってくる冷たい感触、目の下が針で刺されたようにチクリと痛む。シエナが息をする度に、切っ先が食いこみ、死の匂いがますます濃くなった。
(やだ……助けて……助けて……!   陛下…… !! )
 思わずイザクの顔が浮かぶ。それに驚いて目を開けると、涙で歪む視界に広がったのはやはり絶望だった。下種な笑みを浮かべた男の顔だけ……。
(何を期待したの。どうして陛下の顔が浮かんだの。誰も来ない。陛下だってきっと――……) 「ラッキーだよなあ、俺。こんなところで侯爵令嬢に会えちまうんだから」
 シエナの瞳から光が消えていく中、男は高ぶった声で言った。
「死ぬ前にその可愛い声で答えてくれよ。なあ、そのアクアマリンのような眼球をえぐりとって売るだけでいくらになると思う?」
 柔らかい下顎をナイフの腹で持ちあげられ、シエナは覚悟を決めたように目を閉じた。
 その時――――……。
「――――こいつを俺のような隻眼にさせるわけがないだろう」
(え……?)
 一閃。
 ヒュッと風を切るような音がした次の瞬間、悲鳴を上げたのはシエナではなく、フードの男の方だった。
 驚くシエナの肩が強い力で抱かれ、固い胸板へと引き寄せられる。シエナが顔を上げると、息を切らし首筋に汗を纏わりつかせたイザクが、シエナを抱き寄せ、男を烈火のごとき視線で貫いていた。イザクの手には炎を纏った剣が握られている。
(うそ……助けに、来てくれたの……?)
 フードの男は、ナイフを握っていた手を押さえ呻いていた。
 どうやらイザクに腕を切られたらしい――――地面に鮮血が滴り、傷口は燃えたままだ。男は熱さからその場を転げまわる。ナイフは手から離れ、遠くに転がっていた。
「ぐああ……っ! 熱い、痛いぃぃ !! 」
 蛇のように巻きつく炎に悶絶する男。それを氷のように冷たい目で見下ろし、イザクは再び剣の切っ先を男へと向ける。眼光だけで容易く人を殺せそうな恐ろしさだった。
「俺の愛する女を手にかけようとした報いだ。地獄で紅蓮の炎に焼かれろ」
 冷酷に吐き捨て、イザクは男に剣を振りおろそうとする。しかしシエナが縋るようにイザクの胸元を握ると、彼は驚いた様子でシエナを見下ろしてきた。
 凍てついた氷のようなイザクの瞳が、シエナを捉え、元の色を取り戻す。
「シエナ……?」
 シエナを呼ぶイザクの声の打って変わった温かさに、シエナはやっと酸素を取りこめたような気がした。
「大丈夫か、シエナ」
「や……」
 イザクのあやすような声に促され、シエナは震える口を開く。それから何日も水を口にしていないような掠れた声で訴えた。
「殺すの、やめて……」
 別に男が死ぬのが嫌なのではない、むしろ死ねばいいとさえ思っている。ただ、今目の前で『死』という存在をつきつけられるのが怖かった。
「怖いの……やだ……」
「だがお前を殺そうとした男だぞ」
 しかし幼子のようにいやいやと繰り返し泣くシエナに、イザクは何かを感じとったのだろう。一度開いて何か紡ごうとした口を閉じると、冷えきったシエナの背中を宥めるように摩った。
「……分かった。殺さないから大丈夫だ、もう大丈夫だから」
「……私、死にたくない……」
「死なせるかよ。お前は俺が守るから死なない、大丈夫だ」
「守る……?」
 涙に溺れた瞳で見上げながら、シエナが問う。イザクは庇護欲をかきたてられながら力強く頷き、先ほどより強くシエナを抱き寄せた。
「ああ、俺が守ってやるから大丈夫だ」
「……うん……」
 弱弱しく頷くシエナの瞳から、また一つ白露のような涙が零れる。頭上でイザクが痛ましそうな表情をしているのを見て、何故かシエナは安心感を得た。
「約束ね……詩絵菜のこと、守ってね。約束破ったら針千本飲ませるからね……」
「随分物騒な約束だな」
 イザクは苦笑しながら「お前も、約束も守るから安心しろ」と優しい声で言った。
 シエナは指きりはこちらの世界では通じないのだな、とぼんやりした頭で考えながら、前世のシエナ――――詩絵菜のことを思った。耳をイザクの胸元へ寄せ、力強い心音を聞いて安心する。自分は助かったのだと。きっとこの人が助けてくれるから大丈夫だと思った。


 
(何だかあったかい)
 安心する温もりにシエナがすり寄ると、固い何かに頰がピタリと当たる気配がした。そのまま鼻を押しつけるようにして匂いをかげば、深い幸福感に包まれる。思わず頰が緩んで薄目を開けると、視界いっぱいに綺麗な鎖骨が広がった。白くて窪んだ鎖骨が、眼下で上下している。
「…………きれい」
 恐ろしく思考回路の働かない頭で呟く。水に浸してふやけきったような頭が徐々に冴えてくると、眼前に鎖骨が見えるのはおかしいという当たり前のことにシエナは思い至った。
 緩慢な動きで目線を上げていくと、鎖骨から色気の漂う首筋、そこから尖った顎のライン、薄い唇に高い鼻梁と続き、やがて長い前髪がはらりとかかった、伏せられた目元へ到達した。……。
 イザクだった。
 シエナのベッドで、イザクがシエナを抱きしめながら眠っていた。しかも驚くことに、シエナ自身がイザクの背へ縋るように爪を立てていた。まるで全身で必要と叫んでいるように……。
「……まずい、ひっじょーにマズイわ……」
 一晩明けて、シエナはやっと冷静さを取り戻した。
 気絶する前の発言やその他もろもろを思い出し、今すぐ穴を掘って入りたい気分になる。
 とりあえず起きあがろうと思うものの、がっちり腰に腕を回されているためそれも叶わず、シエナは焦ったまま首をもたげ部屋の様子を見回した。
 寝台のそばへ引き寄せられたテーブルには、見慣れない大量の書類が積まれている。おそらくシエナに抱きつかれて身動きのとれないイザクが部下に運んでこさせ、ここで仕事をしていたためだろう。自分のせいで一国の王を振り回してしまった。申し訳なさすぎる。
 シエナは胃が痛むのを感じながら、ベッドの中に潜った。
「……というか、私、誰かが一緒なのに眠れたのね……」
 常に神経をとがらせているせいか、シエナは普段なら衣擦れの音だけで目が覚める。隣に誰かが寝ているなんてもってのほかだ。
 絶対に眠れないと思っていたのに、むしろ、イザクがいることで安心するなんて――――……。
 しかもタチの悪いことに、目覚めた今でさえ、イザクの腕の中に収まっているのが心地よいと感じている。
「冗談じゃないわ……しっかりしなさいよ私……なに甘えてるの……」
 シエナは昨晩の自分の発言を思い出す。あれは完全に、シエナというより詩絵菜だった。誰にも助けられずに死んでいった、シエナの前世の想い……。
 心の奥底で蓋をして鍵をかけておいた想いが、危険に晒されたことであふれだした。誰も守ってはくれないから、自分の身は自分で守らなければ潰えてしまうから。そんな虚勢を張ってずっと強気でいたのに、危険な目に遭ったことで脆い仮面ははがされてしまった。
 だけど、イザクは掬いあげてくれた。あの力強い声で、瞳で、守ると誓ってくれた。前世では誰も助けてくれなかったのに、今回は違った。イザクが、助けてくれた。
 自覚すると、何だかたまらなくなってくる。何か熱い想いが胸の奥から喉にかけてせりあがってくる。物語の中にしか存在しないと思っていたヒーローは、自分にも存在した。守ってくれた。今も守るように自分を抱きしめてくれている。
(陛下が……陛下だけが私を……助けてくれた……)
 どうしよう、とシエナは眉を下げた。気付きたくない感情が芽吹きつつあることを、シエナは嫌でも自覚した。
(……なんで助けてくれたんだろう。私、逃げたのに)
 妃になることを望まれても、自分には荷が重いと逃げだしたのに、どうして追いかけてきてくれたんだろう。なんで、あんなに汗をかいてまで必死に探してくれたんだろう。どうしてあんなに必死に、助けてくれたんだろう。どうして、どうして。
 シエナはイザクの背に回していた腕を解き、綺麗な寝顔へ手を伸ばした。射干玉の髪をさらりとかき分け、イザクの白い頰を両手で包みこむ。
「……守るなんて、言わないで……」
 口から漏れでた声は、風でかき消されてしまいそうなほどか細く、切なさを孕んでいた。
「言わないでよ……自分のことで精一杯なのに、ときめいてしまうから……惹かれてしまうから……。私は……」
 シエナは睫毛を伏せ、下唇をキュッと引き結んだ。
「陛下のことを守れないのに……」
「――――誰が守ってくれと言った?」
 突如降ってきた声に驚いてシエナは目を見開く。反射的に顔を上げると、イザクが眦を吊りあげて怒っていた。
「へい…… !?   なん、起きて…… !? 」
 泡を食うシエナ。目を覚ましたイザクの眼光は鋭く、とても寝起きには見えなかったので、もしかするとずっと目を閉じていただけなのかもしれないとシエナは思った。
「その様子ならいつもの調子に戻ったみたいだな。だが――――おい、シエナ。何をしてるんだ」
「土下座です」
 残像が見えるほどの速さでイザクから離れると、シエナはベッドシーツに額をこすりつけて見事な土下座を披露した。
「し、しがない侯爵令嬢のために、陛下が身を張るなんて、あってはならないことです。……すみ ませんでした。陛下から逃げたのに、わざわざ追いかけて助けていただいて、ホントに何て言ったらいいか――……」
「顔を上げろ」
 呆れたような声で、イザクにグイと腕を引かれる。シエナが再び顔を上げると、不機嫌なイザクと目が合った。
「お前だって聖火祭で俺を守っただろう」
「あれは身体が勝手に……それに、聖火祭ではそうだったかもしれませんが、これからもそうとは誓えないんです。見たでしょう? 私の無様な姿を――……あれほど生きたいとのたまいながら、襲ってくる男に抵抗もできずただ死に怯えて……。私なんかじゃ、陛下を守れないんです」
「俺を守る必要なんてない。お前はニフやロアとは立場が違う。お前の役目は俺を守ることではないだろう?」
 イザクは頑ななシエナへ言い聞かせる。しかし、シエナは美しい顔をクシャリと歪めた。 「陛下の御身のことだけではありません。……私、本当に守れないんです。陛下の――……貴方の……心を……」
 シエナはしわになったシーツを固く握りしめる。包帯の巻かれた指がズキズキ痛んで、爪がはがれたことを思い出した。増してきた痛みに気をとられていると、イザクに逃がすまいと腰を引き寄せられる。
「きゃっ……?」
「――――た」
「え?」
 イザクが何事か呟いた。が、声が小さすぎて聞きとれず、シエナは疑問を漏らした。シエナの背に回ったイザクの手の力が増す。背骨が悲鳴を上げた。
「だから……だから誰が、守ってほしいと言った! 俺がいつ、お前に俺を守れと望んだ?」  
 声色から、イザクが怒っていることは容易に分かった。ただ初めて会った時のような突き放す怒りとは違い、苦しさを孕んだ怒りのようだった。
「勘違いするな」
 イザクは相手を射竦めるほどの強い眼光でシエナを貫いた。
「誰が――……俺は自分のことで精一杯のお前に惚れたんだ。以前にも言っただろう。生に貪欲なくせに、自分の命を危険に晒してでも誰かをとっさに守ってしまうお前に惚れたんだ。恐怖に怯えても自分の心に正直で、行動に移してしまう。そうやって周りを動かしていくお前を好いてる」
 好きと言われ、シエナはイザクの腕の中で小さく肩を揺らした。
「そんなお前を守りたいと思って、妃になってほしいと言った。俺は、お前に守られたいんじゃない。お前を守りたいんだ、シエナ」
「…………っ!」


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