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枯れた薔薇_カバー1

Only with Your Heart~烈炎の騎士と最果ての恋人~

泉野ジュール / 著
園見亜季 / イラスト
ISBNコード 978-4-908757-60-0
本体価格 本体1,200円+税
発売日 2017/01/27
フェアリーキスピンク

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内容紹介

《この先、一生、俺の息が止まるまで、俺の隣にいると誓ってくれ》
異界の地にいる愛しい恋人ルクロフの元に、再び帰ってきた千鶴。しかし隔てていた長い年月がふたりを臆病にさせていた。この地では14年もの時間が経っていたのだ。「何人の男に抱かれた? どれだけの数の男が、その唇に触れた?」再会に胸を熱くする千鶴に、ルクロフは鋭い双眸で冷たく言い放ち、貪るように口づけ、己を千鶴に刻んでいく。お互いのぬくもりを求め合う一方、愛し方を忘れたふたりの想いはすれ違って……。
「俺の言葉が欲しいか? 俺の本心を聞きたいのか? だったらひとつだけ約束してくれ。そうすれば、俺のすべてはお前のものだ」
累計760万PV超、小説サイト『ムーンライトノベルズ』で絶大な人気を誇る、感動のラブロマンス、ついに書籍化!

立ち読み

千鶴の謝罪を前にしても、ルクロフは眉ひとつ動かさず、異世界から帰って来たかつての恋人をじっと見据えていた。かがり火が火の粉を放ち、パチパチとはぜる音がふたりの間にむなしく響く。
 ──やっと帰って来たのに。
 こうして手の届きそうな距離にふたりきりでいるのに。同じ火を囲んで向き合っているのに、もう元には戻れないのかもしれない。そんな不安が千鶴の中で渦巻く。
 いつまでも続くかのように思えた沈黙の後、ルクロフは手近にあった枝を折り、薪の中に放り込みながらゆっくりと口を開いた。
「お前は……変わらないな」
 ぽつりと。千鶴は一瞬、話しかけられているのか、それともルクロフの独り言を聞いただけなのか判断できなくて何度か目をまたたいた。するとほんの少しだけ、ルクロフの表情が和らいだ気がした。
「肌も、顔も、体も、十四年前に別れた時となにも変わらない」
 説明のようなものを加えたルクロフに、千鶴は慌ててうなずいた。
「向こうの……わたしの世界では、あれから一年と二ヶ月しか経ってないの。だから、そう見えるんだと思う。髪は少し伸びたと思うけど」
「一年と二ヶ月」
「うん……でも、ルクロフも、変わってないよ」
 ルクロフはもう一度、枯れ枝を折って火の中に加えると、首を左右に振って否定した。
「いいや、俺は変わった。お前には想像もつかないほど、俺は変わった。十四年前の英雄はもうどこにもいない」
 反論する隙を与えないくらい、歴然とした言い方だった。しかし千鶴は逆に、その懐かしい喋り方に安心した。彼はいつだってこんなふうに、どこか頑ななくらい断定的な話し方をしたからだ。
「わたしは……英雄を探しに来たわけじゃないわ」
 千鶴がささやくと、ルクロフはわずかに片眉を上げた。
「じゃあ、誰を?」
「あなたを」
「俺を?」
「そうよ……。でも、もしかしてもう……結婚、してるの?」
 千鶴の不安を象徴するかのように、闇の向こうから狼の遠吠えに似た鋭い咆哮が聞こえてきた。夜空はどこまでも澄んでいて遠いのに、油断をしていたら吸い込まれてしまいそうな深みがある。そう、千鶴はもう現代の日本とはまったく違う世界へ来てしまったのだ。
 今さら、とルクロフ本人が言った通り、もう今さら帰る方法も分からない。
 もしルクロフがすでに結婚しているなり、他に好きな女性がいるなりすれば、当てもなく目的もなくさまようことになるのかもしれない。前回のように確固とした使命があるわけではないのだから。
「結婚? 俺が、誰と?」
 あからさまな嫌悪を瞳に浮かべて、ルクロフはぶっきらぼうに千鶴の言葉を繰り返した。
「だ、誰かと、よ。十四年も経っているなら、きっとわたしの知らない誰かと出会って……」
 これ以上なにを言わせるのだろう。想像するだけでも胸が押しつぶされそうなのに、言葉にするのはさらに難しかった。言いよどむ千鶴をとがめるように、ルクロフは再び首を振る。
「結婚はしていない。これからもするつもりはない」
 驚いた千鶴が顔を上げると、これ以上ないほど真剣な顔をしたルクロフがにらむようにこちらを見つめていた。
 千鶴は急にどぎまぎして、それを誤魔化すためにふたりの間に燃え盛る炎に視線を移して、黙り込んだ。結婚をしていないというのは、いい知らせだと思っていいのだろう。しかし、これからもするつもりはないという台詞は、他の女を愛しているわけではないが、千鶴のことももう愛していないのだと言外に匂わされたようなもので……。
 宙に舞い踊る火の粉が、目に痛くしみた。
「お前は? その一年と二ヶ月の間に、どれだけの男を誘惑するのに成功した?」
「え……」
 千鶴は驚いて顔を上げた。唐突に質問を始めたルクロフの口調は淡々としたものだったが、その冷たい表情の下には熱い激情がふつふつとたぎっているのが分かる。なんといっても、千鶴はルクロフをよく知っていた。知りすぎているくらいに。
「何人の男に抱かれた? どれだけの数の男が、その唇に触れた?」
 千鶴は慌てて首を振り、その不穏なほどの緊張感から逃げるように少し後ずさった。
「だ、誰も……」
 途端に、ルクロフは凶暴なほどの速さで立ち上がると、燃え盛る炎をまたぐようにして千鶴の前へ立ち塞がった。
「ル、ルクロフ……」
「答えろ!」
「そんなの、誰も……あっ」
 ルクロフの体が覆いかぶさってきて、千鶴はすんでのところで叫び声をのみ込んだ。地面に押し倒され、頭をぐっと抱え込まれたかと思うと、貪られるような口づけに唇の動きを遮られる。その原始的なキスはじっくり数秒続いて、やっとルクロフが唇を離した時、ふたりはお互いに荒く息を切らしていた。
「答えろ……誰が、お前に、触れた」
 ルクロフの声は怒りに震えているようだった。大きな両手に顔を鷲摑みにされ、千鶴の喉は萎縮して声がうまく出せなくなっている。
「誰にも……誰にも触れられてないわ。本当に……きゃっ!」
 ドローテに着せられた白と緑の中世風ドレスを、ルクロフは稲妻のような勢いで胸元から無残に切り裂いたと思うと、胸まで現れた白い肌に素早く、激しく、食いつくように口を寄せた。荒い息を放つ唇が貪欲に胸元を這い、千鶴の全身は頭から足の指先まで小刻みに震え出す。
「ま、待って、ルクロフ……あっ」
 胸の頂を強く吸われ、千鶴の視界は真っ白になった。ルクロフの舌が器用にそこを愛撫すると、背筋がいうことを聞かずに勝手に弓なりになって、千鶴の口からさらなる嬌声がもれる。でも、もちろん、彼はそんなことでは満足しなかった。
「この胸を触った男がいたか」
「あぁ!」
 もう片方の胸の先端を指でいたぶられ、千鶴は悲鳴をあげた。早く答えないと、ルクロフはきっとさらに炎上する。でも、激しい愛の行為に千鶴はまともに喋れなくなっていて、そして答えを得られないルクロフはまた千鶴を追い詰め……の、堂々廻りだった。
「この、胸を、触った男が、いたか!」
 荒い息の合間に、ルクロフは怒鳴るように問いただしてきた。千鶴は涙ながらに叫び返した。
「いないわ! 誰も、あなた以外に……誰も!」
 すると、ふと、胸を責めるルクロフの行為が止んだ。
 ルクロフは荒い息をしたまま千鶴の上に覆いかぶさり、じっと彼女の瞳を覗き込んでくる。千鶴もルクロフと同じくらい荒い息をしていた。
「では……ここは?」
 今度はさっきよりも少し柔らかい口調だったが、でも、だからといって、優しさとは無縁の響きで。
「……っ!」
 ルクロフの指が、千鶴の足の付け根に分け入ってくる。千鶴にとっては一年と二ヶ月ぶり、ルクロフにとっては実に十四年ぶりであるにもかかわらず、彼の手は正確にすべてを覚えているようだった。千鶴の一番敏感な部分を、あっという間に探し出してなで上げる。
「ここに、触れた、者は……?」
 一瞬、もし「いる」と答えたらどうなるのだろうという疑問が、千鶴の脳裏をよぎった。国一の騎士は、時には国一の悪魔にもなれる。きっと誰かが血を見るはずだ。
「ん……んん……っ」
「ここを……誰かに触れさせたか……」
 愛撫は執拗で、まるで千鶴からの答えを聞くのを恐れて、わざとそれを遅らせようとしているのではないかと思えるほどだった。愛液が秘部を濡らし始め、生ぬるい音が溢れだす。
「だ、誰も……誰も……誰もいないから、ルクロフ……」
 千鶴の懇願に、ルクロフはやっと動きを緩めた。答えを急かすようにじっと彼女の姿に見入って、視線で千鶴の体を犯してくる。
「誰も、誰もいないわ。あなただけ……あなただけしか、いないから、信じて」
 切れ切れになる呼吸の合間にそう告げると、千鶴は震える指でルクロフのほおに触れた。少なくとも、彼はそれを拒まなかった。
「あなたを好きだから帰って来たの。あなたを、愛してるから……」
 千鶴の告白に、ルクロフからの答えは返ってこなかった。
 もしくは、沈黙こそが答えだったのかもしれない。
 千鶴はルクロフがどういう男だったかを再認識した。彼は信じられないほど優しい恋人にもなれるし、近づかれるだけで身震いしたくなる恐ろしい騎士にもなれる。
 彼は、裏切りを許さないし、誰かと愛する女性を分け合ったりもしない。彼は、そう簡単に他人に心を許さない。ましてや、一度彼を裏切った元恋人など……特に。
「足を開け」
 ルクロフからの命令に、千鶴は驚愕して目を見開いた。視線だけですべてを奪うことができるルクロフの瞳が、千鶴を真っ直ぐに見すえている。
 抵抗はできなかったし、どんなに恥ずかしくても、ルクロフの願いなら叶えたかった。
 震えながら、ゆっくりと足を開こうとすると、ルクロフはもどかしげに眉間に皺を寄せた。彼を喜ばすことができなかったと分かり、千鶴は涙をのんでさらに足を押し広げようとした。


◇◇◇◇◇


「あなたに、謝りたかった。あの時、なにも言えずに別れてしまってごめんなさいって。こんな言葉だけじゃ十分じゃないのは分かってるけど、でも、でも」
 でも、なんだろう。
 千鶴は自分でも続きが見つけられなかった。でも、懺悔を聞いて欲しい? でも、できるなら、許して欲しい? どれも違う気がする。
「でも、ごめんなさい……」
 頭を下げながら、千鶴は震える声でささやいた。それが今の精一杯だった。
 しばらくルクロフからの答えはなかった。彼だって、こんなつぎはぎだらけの謝罪にどう答えていいか分からないだろう。
 すると千鶴の考えが聞こえたかのように、ルクロフは立ち上がって前へ進むと、彼女の前に立ちふさがった。見上げるほど大きくてたくましい肉体が、さらに鎖帷子の厚みに包まれ、まるで巨人のような重圧を放っている。多くの者は、こんなルクロフを前にしたら震え上がって逃げ出すだろう。
 ルクロフは片手で千鶴のあごをすくい、上を向かせた。
「俺が欲しいのは謝罪じゃない」
 まったく温かみのない笑みが、ルクロフの端整な顔を横切った。
「懺悔でも、弁明でもない。俺がお前をここに置く理由は、ただひとつ」
 突然、残忍なほどの強い口づけに唇を封じられ、千鶴はあえいだ。
 それにもかかわらず、ルクロフは千鶴の息を吸い上げるような執拗なキスを続け、空いているほうの腕でぐっと彼女の体を引き寄せた。
「!」
 鎖越しでさえ感じることができる、脈々と突起した騎士の男性を腹部に押し付けられ、千鶴は息をのんだ。
「あ……」
 過去に幾度もその情熱に貫かれ、快楽を覚えさせられた体の芯が、溶けそうなほど熱くなっていく。千鶴は羞恥にほおを染め、顔を逸らそうと試みたが、ルクロフの抱擁はさらに強くなり身動きができなくなった。
「俺はお前を抱く……何度でも、何度でも、何度でも。昼も夜もない、お前に拒否権もない。そして愛もない……。お前はただ俺の欲望を満たすためだけに、ここで俺に足を開く」
 震えるほどの冷たさと、焼かれてしまいそうなほどの熱さが同時にルクロフの声色に滲んでいた。
「それでもいいなら、お前をここに置こう。いやなら別の場所に部屋を用意する。しかし、お前が選べるのは今だけだ。一度、この部屋を受け入れれば、お前にもう逃げ場はない」


◇◇◇◇◇


「ルクロフ……」
 千鶴が顔を上げようとすると、ルクロフはさらに手に力を込め、動きを封じた。
「見るな」
 突然、やっと聞き取れるくらいの低い声が千鶴の耳をくすぐった。なにを見てはいけないのか疑問に思って戸惑っていると、変わらない低くてかすれた声が続いた。
「今の俺の顔を……見ないでくれ」
 千鶴はその時初めて、ルクロフの体がかすかに震えているのに気がついた。
 ルクロフはぎゅっと千鶴を抱きかかえたまま、動こうとしない。千鶴の一糸まとわない裸の胸が、ルクロフの腹筋辺りに押し付けられ、その男らしい感触に硬く反応する。少しかすれただけで、悦びの声がもれてしまいそうだった。
 でも彼は、わずかに肩を震わせている以外、動こうとしない。
 彼は、泣いているのだろうか。
 それとも千鶴のように、喜びに震えてくれているのだろうか。
 それとも……。
「くそ、チヅル……くそ……俺が、どれだけ……」
 つい先刻まで野蛮な試合を戦っていた戦士とは思えない切ない声が、千鶴の髪の中にささやかれる。顔を上げたくて仕方なくなり、なんとか動こうとする千鶴を、ルクロフはやはり許してはくれなかった。
 泣いているかもしれないルクロフのほおに、慰めの口づけをしたかった。震えている彼の肩を、両手でしっかりと抱き寄せたかった。
 でも。
「動かないでくれ、チヅル、このまま俺の腕の中に……どこにも行かずに、離れないでいてくれ」
 千鶴はうなずくしかなかった。こんなふうに懇願されて、従わずにはいられなかった。
 十四年。十四年も離れていたのだから、こうしてしばらく彼の一番近くから離れずに動かないでいるのも、いいのかもしれない。
 千鶴は目を閉じ、ルクロフの抱擁に身を任せた。
 乾いた綿が水を吸っていくように、枯れていた心がうるおいを取り戻していく。
 しばらく、ロウソクがちりちりと音を立てて燃えていく以外、部屋は静寂に包まれていた。ルクロフは時に千鶴の背をまさぐり、時に鼻を千鶴の髪の中にうずめて、嚙み付くような口づけを首筋や耳たぶに与える。そのたびに緊張する千鶴の体を、ルクロフは深く包み込んだ。
 千鶴は甘い夢の中にいるかのようなくつろいだ気分になり、ルクロフの肌の感触を味わっていたが、急に彼が動いたので、はっと息をのんだ。
「だが……これだけでは足りない」
 荒い息とともに、ルクロフは吐き出すように言った。
 同時にぐっと体を押し付けられ、勢いで舞う花びらと一緒に、ベッドに釘付けにされた。
 ルクロフはわずかに上半身を離し、上から千鶴の裸体を見下ろした。ドレスの胸元ははだけていたが、スカート部分はまだなんとか穿いたままになっている。
 ──これからルクロフがなにをするのか分かっていたから、千鶴は心の片隅で短くアルデに謝らなくてはならなかった。
 案の定、次の瞬間には、繊細な桃色のスカートは悲鳴のような音を立てて引き裂かれた。下着も乱暴に脱がされ、あっという間に生まれたままの姿がさらされる。
「ルクロフ……おねがい……」
 今、激しくされたら、壊れてしまうかもしれない。
 千鶴は懇願したが、ルクロフは容赦なく彼女の足の間に顔を滑り込ませ、最も敏感な花弁をねっとりとなめ上げた。
「ひう……! あ、ああ……!」
 背を仰け反らせた千鶴を両手で抱え、ルクロフはさらに恥部を責めたてる。甘い快感が稲妻のように千鶴の全身をつらぬき、正気を保っていられるのが奇跡のように思えた。でも、もし狂ってしまったとしても、後悔はしないかもしれない。
「あ、そこ……まで……っ」
 花弁への刺激だけで達してしまいそうに悶えているのに、ルクロフは千鶴の特に感度の高い場所──左胸の頂──へと手を伸ばし、そこに円を描くような愛撫を加えた。
 恍惚とするような大きな快感の波が、千鶴を遠くへ押し流していく。どこか、高く、高く、天国に似たどこかへ。
「ルクロフ……も」
 切れ切れに震える声で、千鶴は懇願した。
「ルクロフも……きて……一緒に。おねがい……あっ!」
 彼にもこの楽園を感じて欲しかった。自分にも、彼にこんな快楽を与えてあげられるのだと信じたかった。千鶴はなんとか、ぴくりぴくりと痙攣する体で、ルクロフの男性部分へ手を伸ばした。
 太く硬くそり立つそれに触れた途端、ルクロフは激しく身を震わせて、言葉にならないくぐもったうなり声をあげた後、つぶやいた。
「くそ、チヅル……お前は俺の天国であり、地獄だ」


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