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枯れた薔薇_カバー1

飼い主様は騎士隊長

小桜けい / 著
氷堂れん / イラスト
ISBNコード 978-4-908757-95-2
本体価格 本体1,200円+税
発売日 2017/05/27
フェアリーキスピンク

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内容紹介

こんなに可愛いお前の魅力は俺が一番わかってる!
女子力ゼロ、生活能力ナシ。魔法の研究以外はまるでダメな城付き魔法使いのリーベスは、騎士隊長のオルランドの手を煩わせてばかり。オルランドに褒められたい一心で研究に励むリーベスと、《リーベスの飼い主》と呼ばれるほど彼女から目が離せないオルランド――そんな二人の関係は、しかしリーベス憧れの天才魔法使いが現れてから、狂い始めて!?
「この感情は嫉妬だ。お前を他の誰にも渡すものか!」ますます可愛くなるリーベスの姿は、想いを募らせるオルランドの焦りを煽ってしまい――!?
面倒見のいい騎士隊長と、研究にしか目がない魔法使い女子。微妙な関係はある時を境に均衡が破れて!? 恋に不器用な二人のじれじれ❤︎すれ違いラブ!

立ち読み

「すみませんっ。女性騎士団のシャワー室を借りに来たんですけど、うっかり間違えたみたいで……」
 おろおろとリーベスが答える声がした。掃除用具入れの中は真っ暗だが、濡れた柔らかな裸身がオルランドに密着している感触がしっかりと伝わる。
「そ、そうか。とにかく、もう他の奴らがすぐに入ってくるから静かに……」
 言いかけて、オルランドはハッとした。
 ――何故、俺まで一緒に隠れる必要があったのだ!?
 動揺のあまり一緒に隠れてしまったものの、冷静に考えれば、リーベスだけをここに隠せば良かった。
「っ……俺は出るから、お前は静かになるまでここにいろ……っ!?」
 ここの用具入れは、なぜか珍しく引き戸になっている。オルランドは後ろ手に、閉めた扉を開こうとした。
 だが、扉はほんのわずかな隙間が開くだけで頑固に止まってしまう。
「っ!? 何か、つっかえて……」
 ただでさえごちゃついた狭い場所に二人で入っているので、ろくに身動きができない。向かい合わせになった身体の向きを変えることさえ不可能なのだ。
「扉、開かないんですか?」
 ガタガタと焦って扉を揺らしていると、リーベスが小声で呪文を詠唱した。
 オレンジがかったごく小さな灯りが空中に現れ、掃除用具入れの中をわずかに照らす。
 リーベスは、オルランドの身体越しに首を伸ばし、乱雑に置かれている掃除用具の奥を覗き込む。扉の開かない原因を探ろうと頑張っているようだ。
 それは結構だが、オルランドが腰にタオルを巻いているだけの、ほぼ裸身で互いに向き合っている状況だ。裸の身体がこすれ合えば、健全な男として非常に困る事態になる。
 リーベスが身を動かした拍子に、また胸の膨らみが押し付けられ、オルランドは歯を食いしばって呻くのを堪えた。
 実のところ、小綺麗な身なりをし始めた彼女は、ここ最近、城の兵や騎士の間でちょっとした噂の的だった。
『城付き魔法使いに、あんな可愛い子いたか?』と囁き合い、その正体が変人と有名なリーベスだと知ると仰天している。
 しかしオルランドは前々から、リーベスが意外に可愛い容姿だと知っていたのだ。
 それでも、今まで特に女と意識していなかったからこそ、寝起きでいるところをずかずかと部屋に入ったりできていた。
(今までさんざん寝起き姿を見て、小脇に抱えたり肩に担いで運んでたんだぞ! 一応は女でも、リーベスだけは別枠だろうが!)
 そう自分へ言い聞かせ、動揺するまいと努めてみたが、上手くいかない。
 一方で、リーベスは相変わらず、何かに熱中すると他は気にならなくなるらしい。
 羞恥に頰を染めるでもなく、熱心に暗がりを見つめていたが、やがて嬉しそうな声をあげた。
「あそこの挟まっているブラシを持ち上げれば開きますよ。今……っ!?」
 続けて魔法の詠唱をしかけた彼女の口を、慌ててオルランドは手で塞いだ。
 脱衣所との扉が開き、部下達が入ってくる音が聞こえたからだ。
 こうなったらむしろ、このまま扉が開かなくなっていた方が、何かの拍子に開けられなくていい。
「もう仕方ない。このまま、誰もいなくなるまで大人しく俺と隠れていろ」
 声を潜めて囁き、コクコクと頷いた彼女の口からオルランドは手を離した。
「あれ、オル隊長は?」
 訝し気な部下の声に、オルランドはギクリと肩を震わせた。
 目立たない隅に押し込んであったリーベスの衣服は、数人の者が一度に脱衣所に入れば先客のものだと気づかれないかもしれない。
 だが、オルランドの着替えは、誰でも目につくところへ置いてある。それでいて洗い場に姿が見えなければ、不思議に思われて当然だ。
 しかしすぐ、部下の注意は他所に移ったようだった。
「おいおい、シャワーの栓がちゃんと閉まってねぇし、タオルも使いっぱなし! 石鹸まで落ちてるぞ! ったく、どこのだらしない奴が使ったんだよ」
 ぶつぶつ文句を言う部下に、他の部下が笑って答えた。
「少なくとも、オル隊長じゃないのは確かだ」
「そりゃそうだろ。騎士隊でも一番几帳面な人だからな。それにしても、棚に着替えがあったのに、どこに行ったんだか……」
「急用でもできて、着替えだけ置いていったんじゃないか? だいたい、オル隊長がこれ見たら、間違いなくすぐに片付けてやってるぞ」
「そうそう。オル隊長は良いとこの坊ちゃんなのに、雑用なんかも厭わないもんなぁ。俺達が平民上がりでも差別しないしさ。俺、ここの隊で良かったと思うよ」
 シャワーを浴びながら談笑する部下達へ、オルランドは胸中で叫んだ。
 ――お前達……っ! ありがとう!! そして、すまん!!
 部下達の好意的な解釈はありがたいが、事故とはいえ非常に後ろめたい気分だ。
 しかし、じっと息を潜めている間にも、リーベスの細い首筋から鎖骨、柔らかく盛り上がった乳房を、ほのかな灯りが照らすさまが妙に煽情的に見え、オルランドをより苦悩させる。
 籠っている熱気のせいなのか、他の原因のせいなのか、酷く息苦しい。二人の体温が徐々に上がり、呼吸が荒くなっていく。上気した肌を伝い落ちる汗が、密着した部分で入り混じる。
 はぁ、とリーベスが漏らした吐息が艶めかしく、オルランドの耳を打ち、背骨を震えさせた。
 この状態でリーベスの全身が目に入ることはなくとも、浴室に入った時に見てしまった裸身が、記憶にしっかり焼き付いている。
 形よくツンと上を向いた胸の膨らみはオルランドの手にちょうど収まりそうな大きさで、くびれた細い腰から臀部にかけての滑らかな曲線が、絶妙な魅力を描いている。肉感的とまでは言いがたくとも、紛れもなく『女』の裸だった。それもきちんと成熟し、色気をまとった一人前の女だ。
 女の裸を見たのは初めてではない。士官学校時代には、そこそこ遊びも覚えさせられた。
 だが、後腐れない相手と一時の快楽を得ても、なぜか後に虚しさが残ってあまり楽しめず、かといって、恋人にして抱きたいと思うような女性もいなかった。
 それどころかここ数年は、条件の良い結婚相手を捕まえたいという下心丸出しの女性達から迷惑なほど言い寄られすぎたせいで、あわや女性不信寸前だ。
 リーベスにも、今日まで邪な目を向けた覚えなど一度もなかったのに、どうしようもなく欲情をそそられる。
(だから俺は……リーベスを、そういう目では見たことがないと……っ!)
 引き続き、なんとか平常心を保とうとするものの、身体は正直だ。あらぬ所がどうしても反応を示してしまう。
 おまけに彼女の方でも、互いにほぼ裸で密着している事態をようやく実感し、オルランドのタオル越しに硬くなっているものにも気づいたらしい。
 リーベスから困惑するような顔で見上げられ、気まずくてたまらない。オルランドは片手で額を押さえ、言い訳の声をあげたくなるのを必死で堪えた。
 まだ助かったのは、近くにある大きな祭りの準備に騎士隊も忙しく、今日の訓練が少人数だけだったことだろう。
 数人の部下達も、手早く汗を流して出ていった。
 脱衣所の方からも完全に物音がしなくなると、オルランドとリーベスは顔を見合わせて息を吐く。
 リーベスが慎重に魔法をかけると、つっかえていたブラシが空気の手に持ち上げられてゆらゆらと起き上がり、湿気とカビ臭の籠った掃除用具入れからようやく解放された。
 洗い場の壁に手をつき、大きく深呼吸を繰り返した。下半身と頭に散々血が昇る思いをさせられていたせいか、クラクラと眩暈がする。
「すみませんでした……オルランド隊長」
 不意に背後から、小さく震えた声が聞こえた。
 ――オルランド隊長?
 思わず振り向くと、床に視線を落とし項垂れているリーベスが視界に飛び込む。
 半月前だったら、自分はこの時に苦笑したはずだと、オルランドは思う。
 反省するのは良いことだがあんまり落ち込まなくても良いぞ、とでも言って慰めたかもしれない。
 いくら手がかかっても、リーベスに本気で腹が立たないのは、普段の数々の失敗は、魔法研究へ没頭しすぎてしまうことの副産物だと解っているからだ。
 しかも彼女は、いくら素晴らしい研究成果を出そうとも、己の才能や功績を驕ったりもしない。
 よって、他の城付き魔法使い達とも仲良くしていると、ブルニルダから教えてもらった。
 ただ、リーベスの才能と熱意は類まれな宝でも、あまりにも夢中になりすぎて、時には生きるために最低限のことすら疎かになるのも確かだ。
 誰かがたまに歯止めをかけなければ、彼女は自身の才能に壊されてしまうとも、老婆の筆頭魔法使いは懸念していた。
 だからブルニルダは遅刻を厳しく咎めるし、オルランドも手助けはしても、毎回お説教はきっちりするのだ。
 リーベスの襟首を摑んで、ちょっとだけ彼女の意識をこちらへ引き戻すために。
 筆頭魔法使いのブルニルダなら、直属部下である彼女を案ずるのも義務だ。けれど、オルランドはリーベスの上司ではない。彼女に構うのはただのお節介だ。
 そうしているうちに彼女から『オル隊長』と親しみを込めて呼ばれ始めたのが、いつからなのか思い出せない。
 そう呼ばれるのが自然すぎて、当たり前で……当たり前だったはずだったのに!
「……オルランド隊長? たった半月で、呼び方が随分と他人行儀になったな」
 自分でも驚くほど低い、嫌な感じの声が出た。
 先に他人行儀な態度をとったのはオルランドの方だ。お前に怒る権利はないと、冷静な自分が頭の隅で諌めているが、腹が立って仕方がない。
「え……?」
 驚いたように目を見開くリーベスを前に、妙な気分がした。頭が怒りに煮えたぎっているのに、同時に絶望で血の気が引いているようだ。
(やっぱり、お前にとって俺はもう必要ない存在なんだな……)
 大好きなマティアス先生なら、リーベスは素っ気なくされても必死で追いかけるだろう。彼と少し一緒に過ごすために、生活をすっかり改めるほど熱心になるんだから。
 大きく一歩踏み出し、後ずさりしかけた彼女の腕を摑んで引き寄せた。
「あの……す、すみません。私……もう、前みたいに呼ばない方が良いかと思って……」
 怯えた目でリーベスに見上げられるのに耐えられず、オルランドは彼女の身体を反転させた。折れそうに細い身体を後ろから抱きしめる。
「なぜそう考えたのかは聞かないが、別に変える必要はない」
 耳に息を吹き付けながら囁くと、ビクンとリーベスの肩が跳ねた。
「んっ」
 鼻に抜けるようなその小さな声は、やけに大きく反響して聞こえて、オルランドの背筋を震わせた。
「……お前に手がかかるのだって、今さらだろうが」
 自分の声に、ひどい嫉妬が滲むのを感じた。
 雄を刺激する、そんな声をどこで覚えた? 誰に習ったんだと、激しい憤りが湧く。
(今さら、自分の気持ちに気づくなんてな……)
 声に出さずオルランドは自嘲する。
 女と意識したつもりもなかったのに、いつのまにかリーベスを好きになっていた。
 だから、自分から離れマティアスの隣に居場所を移した彼女から、ただの知り合いとして親し気に声をかけられても喜べなかった。
 この感情は嫉妬だ。
 色気の欠片もない姿ばかり見てきたけれど、半月前に港で乾燥ビスケットを取り出した時、彼女が半分に割ったビスケットを黙って見比べて、オルランドに大きい方を差し出したのも、ちゃんと見ていた。
 似たようなことは、他にもたびたびあったのだ。
 たとえばオルランドと食堂で朝食を取る時、リーベスはいつもテーブルに置かれているミルク入れを見て、少ししか入っていないと黙って継ぎ足しに行く。
 彼女は砂糖だけを入れるから、使わないのに。オルランドがミルクを使うからだ。
 でも、それについて彼女が何か言ったことは一度もない。だから最近になって、ようやく気づいた。
 こちらがいくら断っても『せっかく貴方のために手作りしたお菓子ですのよ』と、恩着せがましく言いながら押しかけてくる令嬢達とは大違いだ。
 オルランドへの好意を、黙ってごく純粋に示してくれるのが、とても心地よかった。
 ああして渡されるのなら、酷い味の乾燥ビスケットですら、素直に受け取りたくなったほど嬉しかったのだ。
 生活態度を心配していると言いながら、心の奥ではずっと、この関係が続くのを期待していた。
 片腕でリーベスの身体を抱きかかえながら、もう片手で石鹸を強く握る。
 だいぶ小さくなっていた石鹸は、オルランドの手の中でグチュリと簡単に潰れた。
「どうせなら、もっと手間をかけて身体も洗ってやる」
「オル……隊長?」
 リーベスが恐々と肩越しに視線を向けるのを無視し、石鹸でぬめる方の手を乳房にニュルニュルと這わせていくと、彼女が焦ったように叫んだ。
「あっ、自分で洗えます! というか、もう洗いました!」
「掃除用具入れなんかに籠っていたんだから、洗い直せ。それよりも暴れると滑って危ないぞ」
 もがく身体をしっかりと押さえ込み、オルランドはさらに手を動かした。
 白く膨らんでいく泡の中で、胸の膨らみをこねるように押し揉むと、先端が硬く尖っていく。
 弾力を持ったそれを二本の指で強く摘まむと、リーベスの身体が大きく震えた。
「あっ、ん……んんっ!」
「洗っているだけなのに、どうしたんだ?」
 嘲るように、冷たく言い放った。
 リーベスの頰が上気していき、艶のある吐息を漏らすたびに、欲情と興奮が増していく半面、耐えがたい怒りがふつふつと湧いてくる。
(俺は、何で勝手に腹を立てているんだ……? リーベスは、本当はこんなに可愛いんだから、もう誰かに言い寄られた経験くらいあっても……)
 この国では、未婚の娘が貞操をとやかく言われることはあまりなかった。エクサルファ王国の発祥が小さな港町で、元々は船乗りに春を売る商売が中心だったせいもある。
 そして国が大きくなり交易が主流となっても、商売相手を接待するために、美貌と高い教養を兼ね備えた高級娼婦が『夜の外交官』として大活躍している。
 おまけに魔法薬研究の発展で、避妊や性病の薬も豊富にできた。行為の後でも丸一日以内に飲めば済む避妊薬もある。
 そうした背景もあり、結婚相手は条件の良い者を慎重に選ぶとしても、婚前には奔放に遊ぶ女性が多い。だからリーベスくらいの年頃では、もうとっくに恋人をつくり、何人かと経験していてもおかしくない。
 そう理解していながらも、止められなかった。
 目も眩むような激情に突き動かされるまま、オルランドはリーベスを抱きしめた。

「あの……オル、隊……」
 必死にリーベスは呼びかけたが、背後のオルランドから返事はなかった。
 オルランドには数え切れないほどお説教されたけれど、明らかにいつもとは違う怒りを感じて怖い。
 けれどその一方で、リーベスの身体は別の感覚も感じていた。
 石鹸のぬめりを帯びた大きな手が肌を滑るたび、ゾクゾクとした感覚が背骨を走り、身体が震えて熱を帯びていく。
(洗うって……でも、私もう大人なのに……)
 にゅるにゅると胸を揉みしだく手に翻弄され、リーベスは焦りに唇を戦慄かせる。
 いくらリーベスがだらしない性格でオルランドの手を焼かせてばかりでも、さすがに幼児ではないのだ。
「や……は、恥ずかしいので……っ」
 かあぁと顔に血が昇るのを感じ、訴えながらオルランドの手を除けようとしたが、鋼みたいに強い腕はがっちりとリーベスを捕らえて離さない。
「恥ずかしい? 寝起きの姿まで、俺に平気で散々見せていたくせに」
 鼻で笑われ、リーベスはうっと言葉を詰まらせる。
「で、でも……あ、あんっ!」
 脇腹をぬるりと撫で上げられて、リーベスの意思とは無関係に甘ったるい悲鳴が喉から飛び出る。
「でも、なんだ? もしかして妙な気分になってきたのか?」
 オルランドが喉を鳴らして笑い、また乳房を摑んだ。
 そう豊かでない乳房が、オルランドの手の動きに合わせて形を変え、そのたびに膨らんだ泡が腹を伝って足まで流れ落ちる。
 視線を落とせば、自分の胸の先端が見たこともないほど赤く染まって硬く尖り、白い泡の合間から覗いていた。
「ん、あぁっ!」
 熟れた乳頭を指先で擦られ、胸の奥へ突き抜ける疼痛にも似た感覚に、リーベスは喉を反らして喘いだ。
 下腹の奥がきゅんと窄まるように疼き、秘所から熱い体液が滲み出るのを感じた。
 羞恥に、リーベスの顔がさらに赤くなる。
 人にも使用する魔法薬を作る者なら、人体の基礎からこういった生理現象までも一通り勉強するのが鉄則だ。
 だがそれは、あくまでも魔法学の一環。性行為だって『あれとそれを、ああやって、こうして、はい終了』というような感じで、魔法薬の調合や魔道具を作る手順となんら変わらない感覚で聞いていたから、授業でも恥ずかしいなんて欠片も感じなかった。
 自分が実践するはずもないからと、実際にはどんな感じかなんて興味も抱かなかったのだ。
 リーベスが激しく混乱していると、腰の後ろに熱く硬いものが押し当てられた。
「っ!?」
 短く息を呑み、それが何なのか頭の隅で理解する。
 掃除用具入れの中でも下腹部に当たっていたが、その時のオルランドは酷く気まずそうで、特に何かしようとかいう様子でもなかった。
 だから、状況が状況だっただけに、健康的な男性の反応をしてしまっただけなのだろうと思った。
 いくら品行方正な男性でも、時には下半身を持て余すものだと聞いたことがあったからだ。
 しかし今、タオル越しでないドクドクと脈動している熱い塊は、あからさまな意図を持って、リーベスの腰にグリグリと押し付けられている。
 喉を引き攣らせてリーベスが硬直していると、オルランドが耳元に口を寄せて囁いた。
「ただ洗っているだけなのに、そんな反応をされると、俺もその気になってきた。……抱いても良いか?」
 ヌルリと耳たぶを舐められ、リーベスは肩を竦めて短い悲鳴を上げる。
「ひゃんっ!」
 ぎゅっと身を縮めると、今度はパクンと耳朶を咥えらえた。クチクチと音を立てて甘嚙みされ、また低く囁かれる。
「拒まないなら了承と取るぞ」
「あ、ぁ……」
 甘嚙みされる耳朶から、ゾワゾワとくすぐったいような妖しい感覚が注ぎ込まれて、リーベスは目を瞑って身をくねらせた。
 怖くてやめてほしいと思うのに、オルランドに言われているのだと思うと、なぜか拒絶できない。
 相手がオルランドでなければ絶対に、最初に抱き寄せられた時点で『結構です!』と思い切り叫び、死に物狂いで逃げていたのに……。
(ど、どうしよう……)
 腰の奥が妖しくざわつき、むず痒いような火照りがこみ上げる。自然と内腿を擦り合わせてしまうと、苛立たし気に囁かれた。
「こういうことには無縁そうだと思っていたが、随分と敏感だな。それともとっくに慣れていたのか?」
 吐息にうなじをくすぐられ、ゾクリと肌が粟立った。同時に、オルランドの言葉に驚く。
 見るからに恋や結婚の類とは無縁な自分が、どうしてこういうことに慣れているなんて思うのだろうか?
「はぁ……うう、ん、慣れてなんか……っ」
 戸惑いながら首を横に振るが、オルランドからは欠片も信じていないような、冷ややかな嘲笑が返された。
「そうか? あんまり良い声で反応をするから、もう誰かに教わったのかと思ったが」
 胸の先端を強く摘まれ、小さな痛みと快楽の混じった刺激に、リーベスは背をのけ反らせる。
 その反応に、オルランドがまた乾いた笑い声をあげた。
「見てみろ」
 後ろを向くように、引き寄せられた。
「っ!?」
 浴室の一番奥に据え付けられていた大きな鏡と、リーベスは真正面から対峙する。
 オルランドに裸身を抱きしめられ、目を潤ませた自分が、鏡の中にいた。
「いやっ!」
 とっさに顔を背けたリーベスの顎を、オルランドが背後から片手で摑み、無理やり向き直らせる。
「自分がどれほど男を誘う顔を……女の顔をしているか、しっかり見ろ」

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