書籍詳細
異世界では子どもができるとわかり、浮かれポンチになった僕がワンナイトラブしてみた話
定価 | 1,320円(税込) |
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発売日 | 2024/09/13 |
電子配信書店
内容紹介
ずっとこうしたくてたまらなかった
「会いたかった。ずっと探してた」平凡なサラリーマンのコウヘイは突然獣人が住む異世界に転移した。男性不妊で傷ついていたコウヘイは、自分が子供のできるΩ性であると知り、酔った勢いでたまたま出会った美形のα獣人・泰然を誘い、彼の甘く情熱的な手ほどきを受け――。数日後、偶然再会した泰然に「父親はいらないけど子供が欲しかった」とあの夜の素直な気持ちを告げる。コウヘイの気持ちに泰然は寄り添い、二人で食事をしたり家に呼んだり、まるで恋人のような時間を過ごすように。優しくてかっこいい泰然に、無意識に惹かれていくコウヘイ。そんな中、泰然は簡単には行けない遠い遠い街へ行くことになり……。美形αと平凡Ωの溺愛ラブ!
人物紹介
コウヘイ
30歳の平凡なサラリーマン。日本からの転移者でΩ。
泰然(タイラン)
20代半ばの美形な獣人でα。生い立ちに秘密があって……。
立ち読み
プロローグ 酔っぱらいと美形と回想
重いまぶたをゆっくりと持ち上げると、両手でさわさわと頬を触っても、好きにさせてくれている美形獣人を見つめた。獣人といっても体格と瞳以外は人間と変わらないから、男が男を撫でてなんだか可笑(おか)しな光景だな、と酔っぱらった頭で思った。
好きにさせているし、もしかしてこの美形獣人も僕がいけるのだろうか、という考えがよぎる。淡い期待に胸を躍らせながら、美形獣人の美しい金の瞳を見つめて言った。
「もっと飲みたい」
ワンナイトどうですか、といきなり言うのはさすがに気が引けた。逆の立場で僕が女性に言われたら、すんごい嬉しいけど、同時にちょっと躊(ちゅう)躇(ちょ)してしまうと思った。まあ、このいかにもαの美形獣人ならそんな誘いも多く、当たり前に受け入れそうではあるが。
だからちょっと遠回しに、お酒を一緒に飲もうと誘ってみた。モテる男だろうからきっとこう言えば、誘われているとすぐに察するかもと思った。
ちなみに僕は元の世界である日本で、ワンナイトに誘ったことも誘われたこともない。元カノもなんとか頑張って付き合うまでこぎ着けたくらいだ。
美形獣人は整った顔を少し傾け、静かな瞳で僕を見つめてくる。そして僕のベージュ色の手を長く美しい指が掴んだ。
僕は美しい顔に見惚れながら、そういえばどうしてこうなったのか、と思考を少し前に戻した。
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「大丈夫ですか」
よい気分でうとうとしていたら声をかけられた。胡座(あぐら)をかき背をもたれている壁の硬さに、そういえばここは酒場だったことを思い出した。顔をゆっくりと上げても、視界がぼやけてよく見えなくて、何度か瞬(まばた)きをしてクリアにした。
すると目の前にすごい美形獣人がいた。吸い込まれそうな金の瞳に、筋がすっと通った高い鼻、吸い付きたくなるような色の薄い唇、アングロサクソン系のとんでもない美形だった。肌質から自分よりも若そうだと感じる。
僕はぽかんと口を開けて、美形獣人の顔をまじまじと見てしまった。
目の前のすごい美形獣人は、肉食獣のような瞳(どう)孔(こう)の、金色の目をしていた。体格も良いし、地球だったら、きっと弱肉強食の頂点にいる種の獣人だろう。
ここは異世界っぽいけど、獣人の元の動物は地球と一緒だから、もしかして未来の世界なんじゃないか、と考えたりしたこともある。なぜか言葉が通じたのも、裏付けになるような気がしていた。けど文明、文化は十九世紀っぽい感じに中華と西洋がごちゃ混ぜで、それに見たことは無いけど魔法も存在するらしい。地球で産まれた僕には不(ふ)可(か)思(し)議(ぎ)な世界で、それはないかと結論づけた。
ぐらぐらと体を揺らし、関係ないことを考えながら、目の前の美形獣人を見つめる。とてつもなく整った顔が、だんだんと心配そうな表情になる。
「動けます? 知り合いの方は?」
美形獣人の言葉に、トイレに続く廊下に座り込んだ経緯を、ぼんやりと思い出した。
異世界で就職した職場の飲み会でしこたま飲んだ。けど酔っぱらっても面に出る方じゃないから、誰も気づいていなかった。会計の流れになったので、お金を幹事的な人に渡して、でもおしっこに行きたくなって、みんなが帰る流れに逆らってトイレに向かった。
けど一人になると急に酔いがまわって、それからを覚えていない。
「……帰った」
簡潔に答えると、美形獣人は眉を寄せた。
「どうしようかな……」
つぶやいた美形獣人は何かを考えているようだった。伏せられた薄い金色の長い睫毛が、きらきらと輝いている。何の動物の獣人なんだろうか。
無意識に美形獣人の白い頬に手を伸ばし、猫を撫でるように指の背でそっと触れてみた。酔っぱらっているからできる所(しょ)業(ぎょう)である。滑らかな肌は歴代の彼女の誰よりも触り心地が良い。歴代の彼女といっても二人だけであるが。
触られて驚いたのか、金の瞳が見開かれた。思わず美しい瞳を覗き込む。酔っているせいかふわふわとして、この美形獣人になら抱かれても良いなと思った。
約一年前、サラリーマンである僕が自室で寝て起きると、なぜか異世界に転移していた。この町の近くの村の入り口に寝そべっていたらしく、突然現れた見慣れぬ人間を、村人はすぐに発見し取り囲んだ。
僕は訳のわからない中、突然、アングロサクソン系の村人に囲まれ、戸惑いと恐怖を極め暴れてしまった。けど村人達はなんとか僕を説得し、村長の家に連れていき事情を聞いてくれた。しかし話を聞いてみると、当然ながら、僕はこの世界の常識を何も知らなかった。村人達はそんな僕の様子に、人間だしΩだし、よっぽど酷い目にあって、記憶をなくしたんだと結論づけた。
どうしたものかとそのまま黙っていたら、丁寧に常識を説明され、獣人という存在と、自分がΩであることを知った。ちなみに僕が転移した国は獣人が人口のほぼを占めるらしい。なので村人達も全員獣人だった。体格はやたら良かったけど、見た目では人間との違いに気付かなかった。……そういえば僕がΩだと、なぜすぐにわかったのだろう。不思議だ。まあ、だから親切な村人達にはとても感謝している。
そして最初はパニックになったが、話を理解していくうちに、この世界に来たことを喜び始めた。理由は自分がΩだったからだ。
Ωとはこの異世界にある第二の性であり、α、β、Ωと三種類が存在するらしい。αは能力に優れている上に、女性でも妊娠させることができ、βは一番数が多く地球の人間と獣人という違いを除けば一緒だ。僕の第二の性であるΩは男でも妊娠することが可能らしいけど、三ヶ月に一度フェロモンを出してαを誘うらしい。しかも自分も発情するらしい。
そして発情した状態でセックスをして、αにうなじを噛まれると、番という夫婦のような状態になるんだとか。ちなみにうなじを噛むことは、つまり結婚ということなので、遊び関係でそんなことをする人はいない。まあ青汁より不(ま)味(ず)い草をむしゃむしゃと食べることで発情は抑えられる。だから実際に発情したことはないので、誰かを誘惑して迷惑をかけたことはない。
そしてなぜ僕がΩであることを喜んだか、というと、妊娠できるからである。日本にいた時から心が女性で妊娠したかった、とかいう訳じゃない。「Ωは男性でも妊娠し子供ができます。三ヶ月に一度、発情期があってその時に……」「に、妊娠して……子供ができるんですか!?」僕は村人にΩについて説明された際、子供というワードにまず反応したのだ。
なぜそこまで反応したのかというと、まだ元の世界にいた二十八歳の時、結婚前に軽い気持ちで婚約者と一緒にブライダルチェックを受け、不妊だとわかったからだ。ちなみに再度、詳細まで調べてみたが、やはり限りなく不可能という結果だった。男性不妊という結果を受け、婚約者と色々と話し合いはした。けど結局、子供ができない男は無理だとなり、婚約を破棄された。
嫌な気持ちを思い出し、まぶたをぎゅっと閉じる。
だから異世界に来て、自分はΩという性だと知り、受け入れる側なら妊娠できるのでは、とわずかに期待した。ダメもとで町の医者的な人のところに行くと、なんと、妊娠できる超できると太鼓判を押された。諦めていた子供ができるかもしれないとわかり、浮かれポンチになった。
ただ子供が欲しくとも僕はゲイじゃない。三十年間も異性愛者として生きていたからか、男に抱かれることにどうしても抵抗があった。女性のαという選択肢もあったが、婚約を破棄されてから若干の女性不信になっていた。それに女性のαはΩの男に突っ込みたいと考える人は少なくて、どちらかというとαの男に抱かれたいそうだ。ちなみにΩの女性を抱きたいαの女性は一定数いるらしい。
だから八(はっ)方(ぽう)塞(ふさ)がりになり、浮かれポンチから一転、途方に暮れていた。まあ、四ヶ月前に就職が決まり、村からこの町に移った時は、仕事に慣れるのに一杯いっぱいで、妊娠を考える余裕はなかった。
ちなみに仕事はお世話になった村の村長が紹介してくれた。そろそろ独り立ちしたいから、仕事が欲しいと相談したところ、知り合いの商家に話を通してくれたのだ。元の世界だったら縁(えん)故(こ)採用的な感じだろうか。すんなりと決まり、学生時代に就活を頑張っていた身としては、拍子抜けしたものだ。とても運が良いなと感謝した。
しかし浮かれてばかりも居られなかった。僕はなぜか運よく読み書き計算ができたので、日本で例えるなら日用品を扱う小さな商社の事務に就職した。ただ元の世界の仕事と職種が違い、さらに異世界の地形や通貨を知らないので、仕事を覚えるのはとても苦労した。すんなりと仕事は決まったが、別のところで大変だったので、世の中そんなに甘くないよなとつくづく感じた。
ただ最近はようやく仕事にも慣れて余裕が出てきた。だから子供のことを考える時間が増え、もやもやとした日々を過ごしていた。けれど神様がくれたチャンスなのか、目の前にいけるかもしれない美形獣人が現れた。
逃がしてなるものか。僕は誘い文句を言うため、重いまぶたを持ち上げ口を開いたのだった。
第一章 αとΩとワンナイト
「うっ……ふぅっ」
自分より大きな唇に覆われ、美形獣人、泰然(タイラン)にキスをされている。まるで生き物のような舌が、口の中を蹂(じゅう)躙(りん)してくる。必死に応えようとするが、つりそうなほどに舌を動かしても、ついていくことができない。
連れ込み宿に入るまでは、ふわふわと気分が良かった。けど、いざことを致そうとすると、一気に酔いがさめてきた。とぎれとぎれの記憶の中に、連れて行ってもらったバー的なお店で、泰然(タイラン)にウザ絡みしていた。さらに陽気に同じ話を何度もしている僕もいる。忘れていた方が良かったかもしれない。
そんなことを頭の隅で思い出しながら、すがるように泰然(タイラン)の腕をつかむ。これから始まる行為にとても緊張し心臓の音がうるさかった。
泰然(タイラン)は僕の気持ちを察したのか、支える様にきつく抱きしめてくれた。その大きなたくましい体からは、ユーカリのような爽やかな、それでいてどこか甘い匂いがした。その匂いに包まれると、酔いとは別の感じに、頭がくらくらとする。不思議な感覚だった。
僕を抱きしめたまま、口の中の厚い舌は歯列をなぞり、それから上顎をゆっくりと撫でた。最後にきつく舌を吸われ、気持ち良さにびくびくと震えた。
唾液で濡れたいやらしい唇が離れてしまうのを名残惜しく見る。自分が今まで元カノにしてきたキスと全然違うなと思った。きっとこんなキスを体験してしまったら、僕のやり方は物足りなくてしょうがないだろう。
「慣れてる……」
冷静な金の瞳に聞かれ、一瞬なんのことだろうと思った。けどキスのことかと思い当たり頷いた。
「二人くらいだけど」
泰然(タイラン)は眉を寄せ苛立ったような表情をした。経験あるのに下手過ぎてムカついたんだろうか。これはお尻は初めてですって、言わない方が良いかなと思った。エロい気持ちがすこし萎えるのを感じながら、こわごわと泰然(タイラン)の顔色をうかがった。
僕の顔を見つめていた泰然(タイラン)は、首をかしげそっと上着を脱がせてきた。慌てて自分で上着を脱きながら、連れ込み宿の椅子にむかう。椅子に上着をかけ、ちらりと泰然(タイラン)を見る。帰らない様子から、他の服も脱ぐことにした。しかしやはりすごく緊張しているのか、もたもたとして上手くいかない。
するといつの間にか後ろに立っていた泰然(タイラン)が、すっと美しい指をのばし、僕のシャツのボタンを外していく。自分より高い位置に感じる息遣いや、筋ばった指に、今から男に抱かれるのを強く実感させられた。心臓がどくどくと激しくなり、さらに尻の穴がじんじんとして、ねとりとしたものが出ているのがわかった。
Ωの男は見た目は地球の人間男子と同じだが、なんと尻の穴に精子を出されると妊娠するらしい。つまりアナルセックスをすれば妊娠できる。
受け入れることができると言われても、尻の穴に何かを入れた経験なんてないから、アナルセックスをするのはただ漠(ばく)然(ぜん)と怖かった。だけど尻の穴が疼(うず)いてる今の自分の状態に、Ωだからすんなりできるかもと期待を持ち始めた。
シャツを脱がされ、下に手がかかったところで、尻の穴だけではなく、前も力を持ち始めていることに気づいた。本来の役目は果たせないのに、快楽にいっちょ前に反応する。そう考えて自嘲気味に笑うと、下の衣類をぐっと下ろされた。ぽろんとぺニスが出てくる。とたんに、致すまえから期待している自身が恥ずかしくなり、泰然(タイラン)の手をなぜか掴んでしまった。泰然(タイラン)は僕の頬になだめるようなキスをする。そして膝の裏をかかえ抱き上げた。
「おわっ」
びっくりして泰然(タイラン)の太くたくましい首にすがりついた。美しい男は「ふっ」と微笑を浮かべた。
美しい男は僕を優しくベッドに下ろし、すぐに下の衣類をすぽっと取り去った。一糸まとわぬ姿となり、恥ずかしさで横向きに丸くなる。さらに腕で体を隠した。ワンナイトに誘っておいて、とんだ体たらくである。
泰然(タイラン)は両手をベッドにつき、僕の上に覆い被さるような体勢になった。そして丸くなった僕の姿をじっと見た。美しい金の瞳に見つめられると、下半身がむずむずとして、両足を擦り合わせてもじもじとしてしまう。見つめられただけで、こんな気持ちになったことはない。これはαとΩという、第二の性のなせることなのだろうか。
それにしても元カノと致すとき、こんなに上手く雰囲気はつくれなかった。いつだって余裕がなくて、がつがつしていた気がする。泰然(タイラン)はきっとセックス上級者だろうな、と気まずさから現実逃避を始めた。
泰然(タイラン)はしばらくじっと見ていたけど、やがて上の服を脱ぎ、たくましい体を晒(さら)した。綺麗に筋肉が付いた、白く美しい上半身に、同じ男ながらぼうっと見惚れてしまう。ぼんやりしていると長い手が伸びてきて、前を隠していた僕の腕を掴みどかそうとしてくる。
「あ……だらしない体だから」
鍛え上げられた体を見た後だと、美しい男の前に裸体を晒すのがさらに嫌になった。泰然(タイラン)は怪訝な表情をしたが、すぐに腕を離してくれる。ほっとしたのも束の間、僕の下半身に移動し、膝を持ってがばっと開いてきた。
「ひえっ」
情けない声を上げると、泰然(タイラン)は面白そうに笑った。そして尻の下に両手を入れ、ぐりっと持ち上げる。美しい顔を尻に近づけ、いきなり穴を舐めてきた。
「ひんっ」
驚いて悲鳴のような声が出た。厚みのある舌にねっとりと一(ひと)舐(な)めされ、それだけで穴はひくひくと反応した。「ふっ」と笑った息がかかりくすぐったい。
厚い舌は穴のまわりの皺を一本一本伸ばすように丁寧に舐めた。それから舌の先っぽを中にゆっくりと侵入させてくる。僕から分泌された体液と、泰然(タイラン)の唾液が混ざり、穴から卑わいな音が出る。その水音は本当に恥ずかしいが、同時に快楽にも繋がっていた。
「あ、あっ、あっ、あっ」
人に触れられたことの無い場所で、熱い舌がぐりぐりと暴れている。経験したことのない快楽に思わず声を上げてしまう。足の先はぴんと伸びて、ぴくぴくとペニスも震えていた。
突然、穴を蹂躙(じゅうりん)していた舌がぬぷっと抜けた。寂しさを感じる前に指が入ってくる。長い指がぬぷぬぷと奥に入ってくる感覚も気持ち良い。背筋がぞくぞくと震えた。そして長い指が入り口から少し奥を刺激したとき、何とも言えない快楽が全身を駆け巡った。
「んあっ」
ひときわ良い反応を見せた僕に、泰然(タイラン)は目を細めると、そこをぐりぐりと集中的に刺激してきた。経験したことのない気持ち良さに身をよじる。穴からはどばどばと粘着質な体液が出る。
「んんっ、ん、あっ」
自慰にも使ったことがないのに、僕の穴は強烈に快楽を拾い上げている。これがΩという性のなせることなのだろうか。
「よく濡れるけど狭いね」
泰然(タイラン)は言いながら、ぎしっと音を立てて上半身を起こし、唇にキスをしてきた。すぐに巧みな舌遣いに夢中になり、すみません初めてです、と言う機会をまた逃してしまった。
舌を絡ませるのに夢中になり、無意識に泰然(タイラン)の首に腕を回し、ずっと隠していたはずの胸を晒していた。泰然(タイラン)はキスをしながらも、僕の乳首をくりくりとこねたり、かりかりと引っかいたりして刺激する。
お尻の穴への快楽と濃厚なキス、それから乳首の刺激に、たまらなく気持ち良くなる。「ふうふう」と荒い息を吐きながら、美しい男にきつく抱き着いた。そして美形は三点同時責めという技を使えるのか、とわずかに残っていた男の部分が嘆いた。
泰然(タイラン)は唇を離すと、鼻の脇に寄せた。
「何か別のことを考えてる」
美形は相手が何を考えているのかも分かるのかと戦(せん)慄(りつ)した。顔を離した泰然(タイラン)はすこし拗(す)ねたような表情をしていた。
「あ、えっと、うまいなっ……って」
穴を刺激する指の動きは継続していて、快楽にもだえながら答えた。ぐりぐりと暴れる指はいつの間にか増えている気がする。
泰然(タイラン)はせっかく誉めたのに、なぜか面白くなさそうな表情をした。そして僕の耳に顔を寄せ舌を侵入させてくる。さらに乳首から下半身に指を移動させ、僕自身を掴んで上下に扱(しご)いた。
「ひっ、ひん」
耳の中を犯される水音と、直接的な刺激による快楽で、頭が真っ白になった。
「あ、ああっ」
これは限界をすぐに迎えてしまうかもしれない。
「……っ、だ、だめ、いくっ、いくから……っ」
僕の切羽詰まった声に、ペニスを扱く手の動きは、より一層激しくなる。穴をいじっている指も、気持ち良いところを的確に、ぐりぐりと刺激してくる。
「いって、ね」
泰然(タイラン)は耳から舌を抜き甘く囁いた。イケボでの誘惑に快楽を享(きょう)受(じゅ)することしか頭に浮かばなくなる。腰を浮かせぺニスを美しい指に浅ましく擦り付ける。尻の穴からは体液が大量に漏れていた。じゅぶじゅぶという音が部屋の中にいやらしく響く。
「あ、あっ、い、いく、いくっ」
ついに限界が来て、がくがくと足が震えた。ぺニスから響く粘着質な水音も激しい。
「あっ、あああっ」
もうだめっと思った瞬間、男のくせに甲高い声を上げながら、精を吐き出していた。
「あ、はあ……はあ、はあ……」
精を吐き出しお尻をベッドにぺたんとつける。心臓がバクバクとうるさく、呼吸は乱れていた。
そんな僕を金の瞳で見つめていた泰然(タイラン)は、上半身を起こすと、ぬぷっと尻の穴から指を抜いた。そして逆の手についていた僕の精液を、長い指の一本一本から、余すところなく舐めとる。
「へ?」
泰然(タイラン)が僕の精液を舐める動作を驚きから凝視した。
もしかして異世界では精液を舐めるのがマナーなんだろうか。異世界のセックスマナーなんて知らないので、そういうこともありえるかと思った。舐めるのは普通なのか聞こうか悩んだけど、下手なことを言ったら怪しまれるかもと思い黙って見守る。小さな疑惑から異世界人だとバレる可能性もなくはない。
地球と同じようにこの世界でも、異世界から来た人間がいると聞いたことはない。そんな世界で異世界から来ましたと言ったら大変だ。きっと突拍子もないことをわめく変人だと思われるだろう。なので異世界から来たことは黙っていた。
泰然(タイラン)はじっと僕の顔を見ていたが、視線をすっと逸らした。そして上体を下にずらし、再び僕の下半身に美しい顔を寄せる。黒い毛を長い指ですくと、ぱくりとペニスを咥(くわ)えた。熱い口内に覆われ、驚いているうちに、長い舌でねっとりとなぶられた。
「あっ、あっ、あ」
あまりの気持ち良さにすぐに声を上げた。いったばかりなのに、ペニスはすぐに立ち上がった。
泰然(タイラン)は先っぽをぐりぐりといじめ、つぎに傘の下をじゅぼじゅぼと吸った。ぐぐっと持ち上がりかけている玉も、忘れずにしゃぶられ吸われた。
三十歳になり精力が衰えていると感じ、二回目の射精は無理かもと思っていた。しかしΩになったせいなのか、自分の分身はまだいけそうだった。さらにフェラをしてもらうのは初めてで、二つの意味でちょっと感動した。
「んっ、んあっ」
泰然(タイラン)のさらさらの髪をつかみ快楽に身をよじる。フェラに夢中になっていると、ぬるぬるの穴に、いきなり二本も指が入ってきた。
「ひっ、んんんっ」
ペニスをしゃぶられる直接的な快楽と、ぐりぐりと穴を弄(いじ)られる刺激に、堪らなくなり体をびくびくと震わせた。とんでもない美形でテクニシャンとかすご過ぎっ、と感動すら覚えて与えられる快楽をむさぼる。しかし絶頂を迎える前に、ペニスから口が離れ、穴から指が抜かれた。
「あっ」
突然の喪失感に思わず悲し気な声が出た。快楽を享受(きょうじゅ)していた場所はすうすうとして、でもいまだに熱を持っていた。
物足りなさそうな僕の顔を、美しい男は苦笑を浮かべ見た。泰然(タイラン)は上体を起こし、ゆっくりと僕の髪を撫でた。
「そろそろ良いかな……」
美しい顔を傾げながら言われた。意味がわからなくて、同じように首を傾げた。
そんな僕の様子を見た泰然(タイラン)は笑みを浮かべ、穿(は)いていた下の衣類をずらした。とたんに上を向いた凶暴なペニスがポロンと顔を出した。あまりの大きさにおののき身をすくめた。そしてこの凶暴なものを、自分の尻の穴に入れるのだ、ということを思い出した。
「あ、え……でか……」
僕の言葉に泰然(タイラン)は笑顔だけを返し、ふたたび僕の下半身に移動した。自身の下の衣類をすべて取り去りひざ立ちになる。そして僕の右足のひざ裏をぐいっと持ち上げ、張り出した凶暴な先端を穴に当てた。
「ひっ……」
恐ろしくなり思わず腰を引いてしまった。
「大丈夫、今までで一番に気持ち良く突くから。それに、もう欲しそうにひくひくしてる」
今までで一番とか言われても、そこに何かを入れたのは、先ほどの泰然(タイラン)の指だけである。ペニスで突かれるのは未知である。欲しそうとか言われても、宿主には伝わってきていないのである。
初めてを散らす女の子のような気持ちになり、ちょっと涙を浮かべる。当初考えていた、Ωだからなんとかなる、という呑気な考えは吹き飛んでいる。代わりに、絶対痛そう、せめてもう少し普通サイズでいて欲しい、ぶっちゃけ怖い、という思いが頭を占める。
「……ごめんなさい、お尻は初めてなんです」
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