書籍詳細
異世界で癒やしの神さまと熱愛
ISBNコード | 978-4-86669-074-2 |
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サイズ | 文庫本 |
定価 | 754円(税込) |
発売日 | 2018/02/16 |
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内容紹介
人物紹介
鴻上晃也(こうがみ あきや)
獣医学部の大学生。子供の頃のペットをなくした事をきっかけに、獣医をめざして奮闘中。
リシュファラ
魂を癒やす神様。動物たちの魂を癒やしながら花だらけの世界で暮らしている。
立ち読み
第一章
実家の裏庭にスコップを手にひとり立つ鴻上晃也は、神妙な面持ちで深く掘った穴に土をかけてこんもりと山をつくった。
ふらりとやってきては庭で昼寝をしていた野良猫の墓だ。
人懐っこいこともあり、動物が好きな晃也は庭で寛いでいる猫と遭遇すると、よくかまってやっていた。
いつものように日向で寝そべっているのだろうと思い、ガラス戸を開けて呼んでみたのだが反応がない。
様子がおかしいと感じて庭に出てみると、その猫はすでに冷たくなっていた。
子供のころに飼っていた犬が病死してしまい、動物の命を救いたい思いが湧き上がった晃也は、獣医になるため大学に進んで五年目になる。
動物が好きだから、できるだけ長生きしてほしい。怪我や病を治せる獣医になれば、その手助けができると考えてのことだった。
庭先で命を落とした猫は野良であったけれど、愛すべき存在であることに変わりなく、裏庭に葬ってやることにしたのだ。
猫の死骸といえども、どこにでも埋めることはできない。ただ、閑静な住宅街に建つ実家の敷地内であれば問題はなく、かつて病死した飼い犬も裏庭に埋葬していた。
「これで大丈夫かな……助けられなくてごめんね」
盛り上がるほど土をかぶせてスコップを脇に置いた晃也は、その場にしゃがんで手を合わせて目を閉じる。
「一緒に遊べて楽しかったよ。天国で仲間たちと幸せに……」
真摯な思いで成仏できることを祈っていると、急に強い力で身体がグイッと引っ張り上げられた。
「なっ……」
いきなりのことに驚いてパッと目を開いて上を見る。
けれど、そこには誰の姿もない。
それなのに、身体はグイグイと引き上げられていく。
「なに? どういうこと?」
あきらかに身体が宙に浮いている。
恐る恐る視線を下に向けてみると、眼下には航空写真のような光景が広がっていた。
「うそっ……」
どんどん地上から遠ざかっていく。
自分の身になにが起きているのかさっぱり見当もつかない。
ただひとつ確かなことは、目に見えない力によって上空へ引き上げられているということだけだ。夢を見ているようだ。でも夢にこんな感覚がハッキリあるとは思えない。
理解の域を超えた事態に、さまざまな思いが頭の中を駆け巡っていく。
このあと自分はどうなってしまうのだろうか。
一緒に暮らしてきた両親、三人の兄たちのもとに帰ることはできるのだろうか。
獣医学部で五年間、頑張ってきた。あと少しで卒業できるというのに、これまでの努力は無駄になってしまうのだろうか。
「ひゃ—っ」
引き上げられる速さが一気に増し、急激な目眩に見舞われた晃也は、為す術もなく意識を飛ばしていた。
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