書籍詳細
いつか陛下に愛を2
ISBNコード | 978-4-86669-287-6 |
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定価 | 1,320円(税込) |
発売日 | 2020/04/28 |
ジャンル | フェアリーキスピンク |
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内容紹介
立ち読み
「加奈?」
アルフレドは背後からゆるやかに腕に抱き込み、名を呼んだ。彼女は首元に回されたアルフレドの腕に手を添え、ゆっくりと見上げる。アルフレドは小さく開いた彼女の口に引き寄せられるようにして唇を重ねた。欲望を?き立てるためではない。二、三度軽く唇を啄み、解放した。だが、離れるには名残惜しく、彼女の?に添え上を向かせている手はそのままに、鼻にキスを落とす。
「加奈」
彼女の名が未練がましさを滲ませアルフレドの口から漏れる。その声に、彼女は目を瞬かせ、恥ずかしそうに笑った。照れくさそうなとても嬉しそうなその顔を、もうしばらく見ていたい。そう思ったアルフレドは、彼女を腕に抱えてソファに腰を下ろした。膝にのせていれば、彼女に無理に見上げさせずとも近くで見られるからだ。
そんなアルフレドの行動を、ナファフィステアは少し不思議に思ったようだった。背中を密着させていたのだから、彼女にはアルフレドが勃っていたのがわかっていただろう。それなのにベッドに向かわず、ソファに移ったことを怪訝に思ったのだ。
だが、彼女は何も言わず、アルフレドの胸に寄りかかった。
「カナという名だと公表するか?」
「え?」
「ナファフィステア・カナとそなたの名を二つあるとすれば、普段はカナの名で暮らせよう。式典など公の場ではナファフィステアの名を使わねばならぬが」
「あー、それは……やめておくわ」
「本当の名だからとて、それで何かできるような者など、この世にはおらぬ」
「そうかもしれないけど……」
彼女に名の公表を勧めたアルフレドだが、その実、それを望んでいたわけではない。
今まで彼女が隠してきた本当の名は、彼女にとって命にもかかわる非常に大事なもの。アルフレドが与えた名は、かりそめの名にすぎない。黒の姫だろうがナファフィステアだろうが、彼女が何と呼ばれても構わなかったのは、ここが彼女にとってかりそめの場所だったからではないのか。
「そなたに害を成そうとする者があれば、余が排するまでのこと」
アルフレドは彼女の額にかかった黒髪をかき分けながら言った。名を公表しても何の心配もないのだと。
「ありがと、陛下。でも、私、ナファフィステアって名前が気に入ってるのよ。すっごく」
彼女の顔は面白そうに笑っていて、本心からそう言っているのがわかる。しかし、アルフレドが彼女に王の所有物であると知らしめるためにつけた名だ。名を与え、彼女をそう扱った。彼女が受けた苦痛や屈辱の象徴のようなナファフィステアの名。それを使う機会を減らし、本当の名を使うことで、彼女の不安だったであろう過去を少しでも遠ざけようとしての提案だったが。
「だって、綺麗でしょ?」
彼女はそう言って首を傾けた。その顔に嫌悪は微塵もなく、自慢げですらあった。本当にナファフィステアの名が気に入っており、彼女はアルフレドが与えた苦痛などとうの昔に乗り越えているのだ。
後宮ではじめて彼女を見た時、彼女は黒い髪を揺らし、たどたどしいながらも好奇心いっぱいの瞳をして答えた。その姿を思い浮かべながら、彼女に似合うものをとアルフレドが考えた名である。彼女の喜ぶ顔を見たいと思い、頭を悩ませたのだ。嫌悪されたいはずがない。名を与えた時は不満そうな顔をされ彼女に怒りを覚えたが、そうすることで己の感情を誤魔化すしかないほど落胆した。それが、今では。
「……加奈」
どちらの名を呼ぶか迷った末、アルフレドは彼女の本当の名を口にした。途端、彼女は目を見開き、小さく息をのんだ。落ち着きを失い、視線が揺らぐ。
「では、そなたの本当の名は伏せておこう」
「う……うん、そうして」
アルフレドは彼女の肩を抱き、顔を覗き込む。
「加奈」
「何?」
「そなたの本当の名を口にするのは、余だけだ」
彼女に唇を重ねながら告げた。
「よいな、加奈?」
彼女は本当の名を聞くたびにピクリと反応する。久しぶりに呼ばれるせいか、恥ずかしいようだった。そわそわしているが、決して嫌がっているわけではない。むしろ嬉しそうに見える。
「はい」
彼女が消え入りそうな小さな声で答えた。彼女は照れくさそうなこの顔を、他の男が呼んでも見せるかもしれない。アルフレドの中から、彼女の本当の名前を公表するなどという考えは、綺麗に消滅した。
「加奈、そなたの名は誰にも教えるな」
「ん」
「そなたの騎士らにも、だ」
アルフレドは彼女に何度も言い聞かせ、口づけた。
「加奈」
「……んっ」
鼻から漏れる音は、返事をしているのか、いないのか。首にしがみつき甘えるような仕草の彼女に、アルフレドはのめり込んでいく。ベッドではなくわざわざソファを選んだ理由を思い出そうとするが、腕の中の柔らかな肉感がアルフレドの意識を捕らえて離さない。
「加奈」
アルフレドは穏やかな気持ちでナファフィステアを見つめようと、ベッドではなくソファに連れてきた。彼女が首を折りそうになりこの部屋に閉じ込めてから、連日抱いて眠っている。彼女への怒りも収まり、彼女が望むのであれば、ただ眠るだけの夜でもよいと思っていた。勃っていたが鎮められるはずだったのだ。だが、今のアルフレドには絶望したくなるほど難しく思えた。
「加奈」
ため息をついてはキスを繰り返し、ようやくアルフレドが彼女の身体を己から引きはがすことに成功したところで。
「アルフレド……しないの?」
彼女が不安そうに小さく呟いた。アルフレドがキスはするのに一向に彼女の夜着を脱がそうとしないため、何事かと不安を感じたのだろう。いつにない彼女の態度に煽られるが、余裕のある体を保ちたい見栄もあり。
「たまには、それもよかろう」
アルフレドはそっけなく答えた。感情を抑えすぎたために、怒気すら滲んでいたかもしれない。己の失態に舌打ちしたいアルフレドだったが。
「これ、私のせいよね? 他の女性に出しちゃダメ」
彼女はアルフレドに怯えるような娘ではなかった。アルフレドに身体を密着させ、屹立したものに太腿を強く押し当て、口を尖らせる。悔しそうな物言いは嫉妬心を含み、彼女にもそういう気持ちがあったのかとアルフレドを驚かせた。
「そなたの中にならよいのか?」
「……いいわ」
アルフレドは見栄を張るのをやめ、ナファフィステアの腰を?んだ。
「煽ったのはそなただ、加奈」
彼女を抱え上げ、アルフレドの太腿を跨がせるようにして座らせる。すると、大きく足を開きソファの座面に膝をついた格好となった彼女の夜着の裾から小さな足先が覗いた。裾から手を滑り込ませ靴を脱がせると、滑らかな肌に触れる。足首からふくらはぎ、更に上へと手を這わせていく。
「アッ……ここじゃ、」
ナファフィステアが慌てはじめた。
「ここでは、何だ?」
「……ソファが、汚れちゃう……から……」
彼女は寝室ではなくアルフレドの居間にあるソファであることに抵抗を感じているらしい。だが、アルフレドとしては今更移動する気はない。
「もうソファが汚れるほど濡れているのか?」
「ちがっ」
アルフレドは太腿にまで滑らせた手を尻に這わせ、会陰から襞へと指で探る。すでに濡れた膣口はアルフレドの指を難なく呑み込んだ。
「んゃっ」
浅く抜き差しするだけで、指はぐちゅぐちゅと粘着質な音を立てた。たいした刺激ではないはずだが、彼女の身体はその先を期待して興奮を高めていく。
「随分と濡れやすくなったものだ。この音が聞こえるか、加奈?」
顔を赤らめながら睨む彼女の耳に囁いた。今夜は特に感度がいいのか、アルフレドの吐息が首筋にかかるだけで彼女の身体はビクビクと反応する。
「……ベッドに」
「そなたの汁でソファを汚せばよい。加奈、そなたが余を煽り、ここでどのように咥え込んだか、どのように喘ぎ欲しがったかを何度でも思い出せるように」
「っ……あっ、アルフレドっ」
アルフレドは彼女の膣口を指で浅く弄り続けた。ナファフィステアは膝の上で刺激を求めて腰を揺らす。だが、その刺激では満足できずにもがくように悶える様が、アルフレドの興奮を?き立てる。
「もっと喘ぐがよい」
「やっ、もう……ゃあっ」
「加奈っ」
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