書籍詳細
一妻多夫の淫らな世界で
定価 | 1,320円(税込) |
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発売日 | 2019/10/25 |
電子配信書店
内容紹介
立ち読み
◆異世界転移は「宝物庫の中にいる」から始まった
「どうしてあそこにいたのか、わたし、全然わからないんです」
尋問が始まった時、わたしは混乱していた。それが異世界転移であるとわたしが気が付いたのは、ある意味手遅れになってからで、騎士団長のグレイさんによって尋問を受け、話をしている時点ではまだそんなことは思いもよらなかった。
いや、おかしい、ということには気が付いてた。でもごく普通に流行(はや)りものの映画やテレビドラマや小説やマンガなどに触れていただけでは、異世界転移の可能性などすぐさま思いつかないもの。おかしいが、どうしてなのかわからない、そういう状態だった。人を驚かす悪ふざけのテレビ番組の収録かとも思ったけど、それにしては長すぎる気がした。
事情がわからないことは不運なこと。そしてなにより不運だったのは、わたしが異世界転移で現れた場所だった。わたしは昨夜、自宅でお酒を飲んで眠り、眠っている間にゴルデアンビルグ国の王城の宝物庫の中に現れていたのだ。
着の身着のままもいいところ、パジャマ姿でだった。もちろん現れる場所をわたしが選んだわけじゃない。物語でも様々な場所に出現するものだけど、宝物庫の中というのは最悪ではないにせよ、限りなく最低な場所の一つだと思う。盗人であると思われて、即座に斬(き)り捨てられても不思議ではない場所。
わたしがそうならなかったのは、わたしがパッと見でも「女」だったことと、この世界に広まる「神の教え」によるものだった。それが幸運であったのかどうかは……幸運かもしれないけど、最初はまだ幸運だとは言いたくなかった。
人によって、幸運とも不運とも言えることだもの。こんな目に遭ったら死んじゃうなんていう人よりは幸運だと思うけど、現実が嫌になってどこかに逃げ出したかったのは事実だけど、もろ手を挙げて幸運だとは言えない感じだった。
ともあれ目が覚めたら宝物庫の中にいたわたしは、たくさんの宝物の置かれた不思議な場所に誰かに連れてこられて閉じ込められてしまったと思って、唯一の扉の外へと助けを求めた。そして盗人として捕らえられたのである。
「仲間はいないんだな」
「仲間って?」
団長さんの問いに、わたしは訊(たず)ね返す。
捕まってからも、わたしは自分が捕まったことをよく理解できていなかった。捕まったと言ってもわたしに逃げる気がなかったので、扉を開けた宝物庫の扉番だった衛士さんは丁重にわたしを扱ってくれて、そのまま女牢へ連れていったからだ。
この国の王城にある女牢……男が入る牢とは完全に区別された女専用の牢は、清潔で小さな窓しかない部屋だった。顔も通らないほどの小さな明り取りの窓しかないけれど、窓から朝の光が入ってきて視界に困るほどの薄暗さではなかった。一室に広いベッドとテーブルと椅子が二つ、本棚に鏡台、壁にはタペストリー。調度品は上品で、落ち着いている。
そこにはトイレがなくて困ったが、外に呼びかければすぐに人が入ってきて用事を訊(き)き、トイレはふた付きのおまるみたいなものを使うことを教えてくれた。
食事も硬めに焼かれたパンに厚切りハムとゆで卵、よく火の通った温野菜が出された。うっすら果汁の味のする水もあって、料理はシンプルに塩味だったけど、わたしには十分な量と味だった。この待遇では、自分が盗人の容疑で拘束されているとは思えなかった。
人の容姿は西洋人風だけど言葉も通じるし、誰かに眠っている間に攫(さら)われたらしいという不安はあったが、乱暴されるわけでもないので、じっと待っていればいずれ解決するだろうとまだ信じていられた。これで数日も監禁されれば色々考えられたのだろうけど、早朝に見つかってから最初の尋問を受けるまでは数時間というところだった。
わたしを見つけた衛士さんよりも偉そうできちんとした身なりの団長のグレイさんと、付き従う副官のシャルカさんと美少年のヨランが陽が高くなる前に現れ、その部屋でそのまま尋問が始まったのである。
現れたタイプの違う美形三人を見て、わたしはうっかりぽかんと口を開けてしまった。わたしを連れてきた衛士さんも美形だったが、尋問に来た三人は更にだった。この時に、こんなにかっこいい人たちは一般人ではあるまい、やっぱりバラエティ番組の収録なんだろうか、騙されているんだろうかと思ったけど、どう見ても日本人ではない容姿の迫力に圧(お)されて問いただせなかった。
わたしの服が、まだくたくたのパジャマのままだったのもある。食事は黙っていても提供されたが、服を貸してくれとは言えなかったので、パジャマ以外に着るものがなかった。美形の一人、錆(さび)色(いろ)の髪と瞳の理知的で涼し気な雰囲気のイケメン……副官さんに椅子に座るように促されると、わたしは今更ながらよれたパジャマ姿が恥ずかしくなった。
わたしの前には蜂蜜色の髪に翠(みどり)の瞳の甘いマスクの年齢不詳な男……団長さんが座った。
団長さんの服装は見るからに一番偉そうなのだけど、ゆるくふんわりしたくせ毛の髪と優しい顔立ちのせいか軟派な雰囲気の優(やさ)男(おとこ)で、年齢は若く見える。席に着くと団長さんが騎士団長だと身分と名前を名乗り、副官さんと一番年下……淡い金髪に青い瞳の美少年を従者と紹介した。
騎士団長という肩書に、わたしは混乱していた。日(に)本(ほん)には存在しない肩書のはずだ。でも、冗談でしょう、とは言えなかった。意味もなく強気に出られないし、軽口も叩(たた)けない性格なのだ。
「君の名は?」
「水口(みずぐち)、亜(あ)子(こ)です」
「アコ? 氏はミズグチ?」
「はい」
言葉はやっぱり通じるらしい、と思う。説明しなくても亜子の方が名だと理解された。
ならここは日本なのか、ドッキリにしては少し抜けている。間抜けな割にキャストは豪華すぎる。色々と思うが、まだそれを口にできない。本物だったら、真実だったら、ありえないと思いながらもそんな気持ちが拭(ぬぐ)い去れない。
「何も盗まずに捕まったのは何故だ?」
「は?」
そして、団長さんの言葉で更に謎は深まった。間抜けな反応をしてから、何を言われているのかを考える。
「捕まった……?」
自分は捕まっているのか? と、やっとそこで思う。確かに、宝石のついた宝物がたくさんある部屋だったと、目を覚ました場所を思い返す。
「あ、あの!」
そして慌てた。
「どうしてあそこにいたのか、わたし、全然わからないんです」
団長さんはわたしを観察するように見つめてきた。
「仲間はいないんだな」
「仲間って?」
「盗賊(とうぞく)か間(かん)諜(ちょう)か……。いずれにせよ君の仲間だ」
「盗賊……かんちょう? い、いません、そんなの」
それからいろいろと訊かれた。でも……多分、信じてもらえなかった。
「気が付いたら宝物庫の中にいたなんて報告しても、信じちゃもらえない」
そりゃそうよね……わたしだって信じない。
「このままだと拷問(ごうもん)をしなくてはならない」
拷問と聞いて、絶望した。でも、それっぽい嘘なんて思いつかない。真実で満足させられないなら、拷問を受けるしかない。
そして——
「あっ、いやぁ…っ!」
くちゅくちゅって団長さんの指が中を掻き回して、クリトリスをぐりぐりして、わたしはびくびくってなって止まらない。イっちゃう…っ。
「い、嫌か?」
そんな風に窺(うかが)うように金髪美形の団長さんは訊くけど、やめてはくれない。なぜなら、これは拷問だからだ。
知らないところにいて怖かったし、わけがわからなくて怖かったし、泥棒だと思われてるってわかって怖かったし、拷問されるって聞いて怖かった。パンツを脱がされて怖かったし、押さえつけられて怖かった。けど、媚(び)薬(やく)をアソコの穴に入れられて、ずっと弄(いじ)られてるとどうでも良くなってきた……。
びくびくってなるの、じんじんするの。もっと触ってほしくなるの……これが気持ちいいってこと?
「あっあっ」
「良くても嫌でも止められるものではないのですから、そんなことは訊くものではないですよ、グレイ様」
その通りです、副官さん。
団長さんが優男風の美形なら、副官さんはクールな細マッチョのイケメンだ。
上等の男性たちにえっちなことをされるのは、人によっては大歓迎なのかもしれない。でも、わたしは男の人と一対一でも慣れないのに、何人にも囲まれてなんて恥ずかしすぎる。だけど、これは拷問だから……耐えられないことじゃないと、拷問にならないもんね……。
「訊くべきことは別にあるでしょう。さあ、もう一度。あなたの名は?」
次の尋問は、右側で手足を押さえてる副官さんがすることになったらしい。名前も、何度も訊かれている。でも何度訊かれても同じことしか答えられない。
「あ、亜子……っ」
「アコ、何のために宝物庫に忍び込んだのですか?」
「気がっ、ついたら、いたの…っ」
「誰かに送りこまれたのですか?」
「しら、ない…っ、あ、んっ、やっ、あぁっ!」
急にクリトリスに吸い付かれたっ。びくびくびくっと痙攣(けいれん)して体が跳ねるっ。またイっちゃった……。
くちくちと指で穴を弄(もてあそ)んでた団長さんが、クリトリスをちゅうっと吸って、舌で嬲(なぶ)ってるんだってことはわかる。わかっても、どうにもできない。イっちゃうのも止められない。
「仲間はいないのですね?」
副官さんはわたしがイってても気にしないで聞いてくる。
「いな……」
息が乱れて、こんなの、ちゃんと答えられない。でもいいよね。何度も答えたことを繰り返してるだけだから。
「では、どこの国から来たのですか」
「え……」
あれ、これ初めての質問だ。
「に…ひぁんっ!」
またぺろって舐められたぁ……。
「やぁ…っ」
「ああ……可愛いな」
熱い吐息がアソコにかかって、もうそれだけでイキそうになっちゃう。
「グレイ様」
副官さんの冷たい声。
「加(か)虐(ぎゃく)趣味がおありでしたか」
「いや!? ない! ない、と、思うが……」
語尾が弱くなるって……団長さん、サドなの? 目覚めちゃったの?
「可愛くないか? その感じてるのに、嫌がるって」
……目覚めちゃったんだ。
「僕、わかります」
左側で手足を押さえてる美少年が団長さんに追従した。
「女性は普通、指で犯したり口で奉仕したりにこんな風に嫌がらないでしょう。すごく新鮮で……興奮します。こんなことをしても拷問にならないんじゃないかと思いましたが、他国の女性は嫌がるものなんですね」
「いや、昔はそうだったかもしれませんが、もう近隣の国にも神殿の教義は浸透しています」
副官さんが首を振る。
「この近辺の国の女なら成人前に調教済みでしょう。この拷問は調教済みであることが前提の、快楽責めです。媚薬を使い、快楽で理性を壊し、喋(しゃべ)らせるのですよ。嫌がるからこういう拷問なのではありません」
成人前に調教済みって……この国、どういう国なの。女の子はみんな淫乱なの? みんな男の人とえっちするのが好きなの?
「んっあっ」
また団長さんが舐め始めた…っ。
「あああ……っ!」
イっちゃうわたしを挟んで、美少年と副官さんは話を続けてる。
「それでは彼女はこの近くの国の出身ではない……ですよね。容姿も違いますし」
「それは最初からわかっています。問題はどうやって宝物庫に忍び込んだかと、その目的でしょう」
そんなの知らないもん……。ここどこなの……? 日本じゃないと思うの。でも言葉は通じるのは何故?
「さあ、もう一度。どこから来たのですか?」
「にほん……っ」
「ニホン?」
「ここ、どこ…っ?」
「まだ城ですよ。城外には出ていません」
「おしろ…? どこの…? んんぁっ!」
「……ここはゴルデアンビルグ国の王城です。それすら知らなかったのですか?」
聞いたことない国……本当にここ、地球なの…?
あ、あ…またイクっ!
「あー……ヤバい。俺、もう限界」
「団長は媚薬入りの愛液を舐め続けてますからね。どうします? 彼女を犯しますか?」
「え、僕もしていいですか?」
「いいでしょう。まだまだ拷問は続けないといけませんから、皆でしましょう」
副官さんが怖いこと言ってる……。
「や、やだ」
この三人に犯されちゃうの?
「ごめんな、でもちょっともう限界だ…っ」
団長さんが腰を掴んで……ぐぽっ、ってイキまくったぐちょぐちょの穴に突き入れてきたぁ…っ。
「あ——っ!」
どうしよ、わたし、犯されてイっちゃった……。
「くっ、締め付けキツイな……!」
「あっあっあっあっ! いやぁっ」
団長さんの太いおっきなモノが奥を突いて、太いとこが中を擦(こす)る…っ。気持ちいいのっ。ごつごつって子宮が揺れるっ。ごりごりって子宮口までこじ開けられそうっ。
イっちゃう…っ、イキっぱなしになっちゃうっ!
「やば、もう出る…っ」
イってる中にびゅくびゅくって、熱いものが注がれる……どうしよう…赤ちゃんできちゃう…。
「早いですよ、グレイ様」
「媚薬のせいだよ! ……あと、嫌がりながらイってるのが可愛すぎる」
「交代しましょう」
「僕、先にいいですか? 僕ももう」
美少年が団長さんと位置を交代する。足は掴まれてるから、閉じられない。
「あ、すごい、団長のがあふれてきてる……いやらしい穴だね、君」
君……って、君の方が年下だと思うよ……。
「あうっ!」
でも美少年も太いっ。
気持ち、い……レイプされて気持ちいいなんて、媚薬のせい、だよね……でもっじゅぼじゅぼ激しく奥突かれて気持ちいいよぉ…っ!
「あ、あ——!」
「うくぅ…っ」
また、中出しされちゃった……。
「ヨランも早いですよ」
美少年は恥ずかしそうに副官さんと場所を代わった。
「おまえもやってみればわかる、名器だぞ、この娘」
「それは楽しみですね」
副官さんが入ってきた……! 副官さんのもおっきい…っ。この国の人は、みんなおっきいの? またイっちゃう…!
「……確かに、具合がいい」
「あっあっ」
「でも、グレイ様やヨランのようには、早くは終わりませんよ。中イキはしているようですが、もっとイかせなければ、拷問になりませんからね」
イクのが拷問なの…? 犯されて気持ちいいのが拷問なの…?
「ほら、もっとイキなさい」
「あ——っ!」
だめ、きもちいい…っ。おかされるの、きもちいいっ。
きもちいいのぉっ……。
「あっ! はぁっ…あ……っ」
それから、何度も入れ替わって……今は、後ろからお尻を持ち上げられて、団長さんに突かれてる。
気持ちいい…っ。犯されるのって、こんなに気持ちよかったの……団長さんたちは仕事でわたしを犯してるけど、みんな美形だし、えっちなこと上手いみたい……。
「ああ、可愛いな……アコは」
それに、団長さんはずっと、かわいいかわいいって言ってくれて……なんだか、恋人にされてるみたいな気がしてきてる……。何度もなんども犯されて、理性が、どっかいっちゃってるから、かな……。
「あっああっ……」
「もう、嫌じゃないのか……?」
いやじゃない…? ううん、拷問は、嫌。
「いや……」
「嫌か?」
「いやぁ…んっ、あぁ…っ」
「嫌なのに、こんなに感じて……本当に可愛い」
じゅぷじゅぷって音が速くなる。ナカに、団長さんが打ちつけてくるぅ…っ。
「嫌がる君も可愛いが、嫌じゃないって言わせたい…っ」
だって、拷問なんだもの……。
「ああ——っ!」
またイって……。
「くぅっ」
また中出しされちゃったよぉ……。
?
◆カルチャーショック! 人口比編
目が覚めたら絶望的な気持ちかと思ったら、そうでもなかった。目が覚めて真っ暗だったら、やっぱり落ち込んだかもしれないけど、まだ外は明るいみたい。小さな窓からは昼の空が見えている。
わたしは水口亜子、二十三歳。大卒で厳しい就職戦線を潜(くぐ)り抜けてやっとで就職して、歓迎会で声をかけてきた人と社内恋愛してたと思ったら相手が既婚者だって後からわかって不倫になっちゃって、ばれて別れて会社に居辛くなって退職した。
そんなよくある酷(ひど)い話を田舎にいる親代わりに育ててくれた伯父(おじ)さんには言えなくて、やけ酒してふて寝して気が付いたら知らない国のお城の宝物庫にいた。それで捕まって、えっちな拷問を受けて……今ここだ。
直前の現実が酷かったから、えっちな拷問も大したことないとか思えちゃったのかなあ。それとも、ここにどうして来ちゃったのか、っていう方が深刻だからだろうか。ここにどうして……もう誰も知らないところへ行っちゃいたいとか思っていたのを知らない神様が叶えてくれたんだろうか。
いやでも、願いを叶えるならアフターフォローもお願いしたい。確かに誰も知らないところみたいだけど、さすがに捕まって拷問を受けるようなところは勘弁だ。盗む気はなかったけど、不法侵入の罪は成立しちゃってる。それが宝物庫じゃあ、言い訳は難しいって、わたしだってわかるよ!
でも。繰り返しになるけど、目を覚ました後、わたしは意外に大丈夫だった。いや、腰は重だるいし、足は立たないし、起き上がれないけど。ビッチじゃなかったつもりなんだけど、案外ビッチだったのかもしれない。穢(けが)されちゃった、なんて気持ちにはなってない。騙されて不倫しちゃって、略奪しようなんて気はなかったのに一方的に悪者として奥さんに詰(なじ)られたのよりはずっとマシ。
今回のは、向こうは仕事、わたしは拷問だもんね。えっちなことをしたからって、誰に責められることもない。しかも、すっごく気持ちよかった……。
あとはもしかしたら、ひとまず逃げ出したかった現実から逃避できたからかもしれない。伯父さん、迷惑な顔をしつつも引き取って大学まで出した姪(めい)っ子がやっと就職できたのに、こんな醜聞(しゅうぶん)で田舎に帰ろうものなら一家もろとも村に居られなくなっちゃうもんねえ……。田舎だからね。いっそこのまま行方不明という方がマシかも、ということまでは考えてた。どっか別の土地へ行って、生きていこうかと。
……でも、知らない国に来るつもりはなかった。知らない国どころか、もしかして知らない世界かもしれない。西洋風の容姿のファンタジー風な服装のイケメンたちが騎士で、女はみんな淫乱ビッチな国なんて、地球上には多分存在しない。ならここは別の世界なんだろうか。
もう帰れないんだろうか。いや帰っても大変だから当面は帰りたくないけれど、ずっと帰れないとか言われると学生時代の友達にももう会えないってことで、それはちょっと胸にくる。
それに拷問を受けちゃうような罪人じゃ、わたしここでちゃんと生きていけるんだろうか。そもそもこの国で生きていくってことは、ビッチになって生きていくってこと……?
わからないことはたくさんあるけれど、確かなことがいくつかある。高校時代の彼氏も、大学時代の彼氏も、会社でわたしを騙した最低男も、短小だったってことだ。さっきわたしを犯した三人が、人並み以上におっきいのかもしれないけど。もう一つ、えっちは気持ちいいものだったってこと。単に今までの男が下手だったのかもしれないし、媚薬のせいもあるかもしれないけど。
そんなことを考えてぼんやりしているうちに、扉が開いた。
「目が覚めましたか?」
来たのは美少年のヨラン君だった。たらいのようなものを持って、部屋に入ってきた。
「あ……」
起き上がろうと思ったけど、起き上がれなかった。でも起き上がらなくて正解だった。まだ、裸だったから。
「起きなくっていいですよ。団長が媚薬のせいで途中でタガが外れちゃって、手加減なしで六回だか七回だかしてたから、体辛いでしょう?」
そんなにしてたのか……。途中からわけわかんなくなっちゃってたけど、確かに最後の方はずっと団長さんだった気がする。
でも、罪人なのにいいのかな。っていう気持ちで布団の中からミノムシのまま見てたら、美少年はすべてわかったようににっこり微(ほほ)笑(え)んだ。でも、やっぱりわかってなかったのか、続いた言葉は求めてたものじゃなかった。
「最初のうちはまだ理性が残ってたんですけど、君の穴すごく気持ちよかったから、二度目の途中からトんじゃったみたい」
あ、穴が気持ちいい、とか、こんないやらしいことをなんでもないことのように爽やかに言うのが、文化の差ってやつなのかしら。美少年、明らかに年下なのに……!
ヤられたことより、美少年にいやらしいこと言われるのが恥ずかしくって両手で顔を覆った。
「大丈夫?」
「は、はい……」
「熱があるんですか?」
「いえ……ちょっと、恥ずかしくって」
「恥ずかしいんですか?」
「はい」
「何が恥ずかしいの?」
わあ、カルチャーショック。何が恥ずかしいかわからないくらい、文化が違うんだ。
「わ、わたしの国では男女の行為は秘密にすることで、あんまりあからさまに言うことじゃないので」
「そうなんだ」
美少年君は更にびっくりした顔でわたしを見た。びっくりしたせいか、言葉も崩れてる。でも、丁寧語より素の方が気が楽だから、このままでいてほしい。
「容姿もこのあたりの感じじゃないし、他の国の人だとは思ってたけど、そんなに違うものなんだね。本当にサーシド神殿の普及してない土地から来たんだね」
「サーシド神殿?」
「知らない?」
頷(うなず)くと、「そっか、そもそもサーシド神も知らないんだね」と美少年は驚きを新たにしたようだった。
「サーシド神信仰は、この国の国教だよ。簡単に言えば男は女を大切にしなさい、男は争わずにみんなで女を共有しなさいって教え」
わたしはひっそり息を呑んだ。
女を大切にする、男は争わない、まではよかったけど、女を共有するって……つまり、そういうこと? さっきみたいに、複数の男で輪姦(りんかん)とかしちゃう教えなの? だから、女は淫乱でビッチじゃないといけないの?
「サーシド神の教えが普及していないと、女の人は大変じゃない?」
「え……どうして?」
わたしからしてみれば、こんな宗教がある方が女性は大変だと思う。だって、たくさんの男の人に犯されるんでしょ……?
「だって昔は夫一人妻一人が正式だったけど、それだと女性の数が足りないから、我が国もサーシド教が広まる前は女性は奪い合われて、むりやり性(せい)奴(ど)隷(れい)にされたりして苦労したって聞いてるよ。今は貴族の嫁入り婚の政略結婚や神殿の巫女(みこ)、受刑中の女囚でもなければ、気に入った男を夫にできるし」
わたしは美少年の言葉に、隠すのも忘れて息を呑んだ。
ビッチな宗教が普及する前は、女は性奴隷だったとか……この世界は、文化が違うってだけじゃないのかも?
「女性の数が足りないの?」
「え」
わたしが訊き返すと、美少年はしばし固まった。
「……君の国は足りなくないの?」
この続きは「一妻多夫の淫らな世界で」でお楽しみください♪