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将軍閣下の異世界らぶらぶ婚姻奇譚 上

葛城阿高 / 著
逆月酒乱 / イラスト
定価 1,320円(税込)
発売日 2021/09/10

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内容紹介

空からスパダリが降臨!?(全裸で)
「新婚だからな、俺はまだまだし足りない。生涯かけて君を愛し続けても、満足できるかどうか」婚約者にゲスい浮気をされ傷心マックスのアラサー女・伊織の前に、なんと理想のイケメンマッチョが現れた!? ――ただし空から全裸で降ってくる形で。異世界からやって来たという彼・ジークハルトを放置できず家に連れ帰った伊織は、婚約破棄のつらさと怒り、そして酒の勢いで、彼と一夜を過ごすことに。強面ながらも優しい彼に身を任せ、翌朝目覚めたらそこはなんと異世界の超豪邸のベッドの上!? しかも隣には当然のごとく裸のジークハルトがいて……「君と結婚できてよかった。これからきっと楽しい毎日になる」どうやら軍の重職にある彼は結婚相手を探しに異世界転移し、昨夜のことをきっかけに伊織を妻と決めて連れ帰ってきたらしく――? 超絶倫かつ超絶技巧を持つジークハルトに初っ端から喘がされてしまった新婚生活は、身も心も大波乱確定で!?

立ち読み

   1、 物語は朝チュンから

 暑い。
 苦しい。
 ベタベタする。
 これだから夏は嫌いなんだ。厳密には冬も寒くて嫌いだから、春と秋だけ残ればいいのに。早く秋になってほしいし、その次には冬ではなくて春が来てほしい。
 ……なんて、どうにもならないことを考えながらエアコンのスイッチを手探りしていた私は、予想外の感触を得る。
「……んん?」
 温かく、柔らかい。手首に触れたそれは私の肌の上を滑るように移動して、私の手をすっぽりと包み込んだ。
 少しカサついていて、ゴツゴツしていて……そう、生体だ。誰かの手だ。
 私の手より大きな手に、指を絡め取られたのだ。
 触り心地と大きさから、男の人の手だと直感した。肉厚で、体温高めで、凄(すご)く……なんていうか……誰?
 よくよく思い返してみれば、私は婚約者と別れたばかりだった。
 別れた理由は向こうの不貞と共同貯金の使い込み。なーにが「俺たちの将来のため」だ? こちとら真面目にコツコツ貯金していたのに、あのポンコツ男ときたら私の金をよその女に貢ぐなど!
 不貞発覚の経緯は、SNSメッセージの誤送信だった。そのおかげで、こちらには確たる証拠もある。婚約破棄とお金の返還はもちろんのこと、慰謝料だって請求してやる。
 それにしても、あのポンコツに費やした六年が丸々無駄となってしまった。私の二十代の一番美しいはずの時期を、ポンコツに吸い取られ徒費(とひ)してしまった。それが一番虚(むな)しく悔しい。
 せめて、「思い出をありがとう」みたいな言葉とともに訣別(けつべつ)できればまだよかった。しかし別れの原因はポンコツの裏切り行為なわけで、憎しみと悲しみと怒りによって、私の心はドロドロぐちゃぐちゃの地獄絵図と化していた。
 暑いし、だるいし、瞼(まぶた)が重い。
 枕に顔を埋めたまま、私は力なくため息をつく。
 ああ、私に一途で不貞を犯さず、常識的な金銭感覚を持ちギャンブルも煙草(たばこ)も一切しない、ムキムキマッチョなイケメンさんがどこかに転がっていないかしら。できれば石油王並みの財力もあって、私に一目惚れしてくれて……。
 いや、現実逃避している場合ではなかった。まずもって、添い寝の相手は誰なんだ!
 あのポンコツなわけがないから、不法侵入の強姦魔か!?
 とりあえず離れようと試みた。が、体に絡みつく腕と脚、そして背中にのしかかる重みのせいで、私は身動きが取れない。
 背後にいる相手は、寄り添うように寝そべっていて、しかも、この感触はきっと裸。
 誰ともわからない人の体がべったり密着してしまっている。
「や、やめて……、はなれ――」
「暴れるなよ、イオ」
 耳の近くで、男の低い声が響いた。
 イオ? 木星の衛星の……って、もしかして私のこと? 『伊(い)織(おり)』だから『イオ』?
 ていうか……なにその声のトーン? やたら甘いような……?
 頭が真っ白になっている間に、今にも「ハニー♡」と呼んできそうな男はさらに私を拘束する。
「う……ひゃっ!? あっ、ちょっ」
 男の手のひらが私の乳首を掠めたので、思わず不本意な声が出た。指先が胸の谷間を通り、みぞおちからヘソ、そしてもっと下の――。
「昨夜散々しただろう? それとも、まだし足りない?」
「した? ……何を?」
「ナニを」
「ナニ……っあ!?」
 男の指は下の茂みを通り過ぎ、アソコの割れ目に侵入した。この男、マジモンの強姦魔だ……!
 抵抗して殺される可能性を考えたら、このまま我慢してやり過ごすべきか、それとも、力の限り足掻(あが)くべきか。……その前に、理解し難(がた)いことがある。
 どうして私、全裸?
 どうして私、ヌルヌル?
 そしてこの人、誰!?
「イオ」
 私の混乱など知りもせず、再び男が私を呼んだ。しかもまた、恋人を呼ぶみたいに甘い甘い声色で。
 腹に響く低い声。ゾクゾクして、頭の芯がとろけちゃいそうな、猛烈に心地いい音域。
 なんとなく体にまとわりつく気だるさのせいもあってか、瞼がうつらうつらして閉じかける。しかし寝ている場合ではない。私は気力を振り絞った。
「やだ! やめて! 離れなさいよっ!」
 私の急所近くをゆるやかに動いていた指が止まった。止まったというか、手を押さえて私が無理やり止めたというか。
「……イオ? まさか、俺のこと……覚えてないのか?」
「だっ誰があんたのことなんか! いいから早く、離れ――」
 私の背中にくっつく男を、首を捻って精一杯睨みつけ……。
「……ジーク?」
 白銀の髪、真っ赤な眼、浅黒い肌とムッキムキの恵体(けいたい)を有する異邦人。
 彼のこの、どこかの漫画のキャラクターかと見まごう姿を目に入れた途端、昨夜の記憶が不鮮明ながらも蘇(よみがえ)った。
 全裸の不審者と遭遇し、お互いに自己紹介をして、酒盛りの勢い余って泥酔して、結婚を迫って、乗って乗られてたくさん喘いだ……ような、気がする。
 ……頭が痛い。ガンガンに痛い。
 深酒のせいか、自らの軽挙を思い出したせいか……否(いな)、両方か。
「よかった、ちゃんと覚えてるな。二日酔いは大丈夫か?」
「ちょ、待ってジーク、ちょっと整理させて……」
 彼の腕に抱かれているというこの状況は、とりあえず甘んじて受け入れよう。ワンナイトラブのお相手と朝を迎えた、ただそれだけだ。
 まず私に必要なことは、昨日何が起こったか、しっかり思い出すことだ。


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