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チートな次期魔王様にしつこく求婚されています

立花実咲 / 著
壱也 / イラスト
定価 1,320円(税込)
発売日 2022/03/25

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内容紹介

我が妃となる乙女よ、迎えに来た
「目覚めよ、我が花嫁」魔界の王子エルドレッドは、伯爵令嬢アンジェラを花嫁に娶る約束の日を迎えたと、魔界から舞い降りた。肌に刻印された薔薇の証は、アンジェラの幼い頃の記憶と引き換えに交わした契約と言い、甘い囁きで誘惑してくる。繊細な愛撫と情熱的な口づけに蕩かされ、魔力で分裂したエルドレッドに前後から愛され、純潔を散らされる。悪魔は、甘い言葉で人を惑わすと分かっていても、甘い毒のような酩酊する恋に囚われる。使い魔の黒猫たちも一緒の次期魔王の妃と望まれる溺愛生活がはじまって!?クールな悪魔御曹司と一途な伯爵令嬢のとろ甘な溺愛!!

立ち読み

★プロローグ、忘れられた約束


『——忘れてはならないよ』
 その言葉が、心の中にずっと引っかかっていた。
 けれど、それが何だったかが思い出せなかった。
 時が経つにつれ、顔も、声も、完全に記憶から抜け落ちていた。
『とても大切な、約束だ』
 そう、大切な……大切な約束だった気がする。
 大切な人との——。
?


★1、目覚めたらチートな次期魔王様の腕の中


 外敵から身を守り、美しい蝶(ちょう)へと変(へん)貌(ぼう)するまで、さなぎは柔らかな繭(まゆ)に身を包むが如(ごと)く、天(てん)蓋(がい)付きの上品なベッドにゆったりと横たわっていた。
 彼女の美しい金(きん)糸(し)雀(じゃく)色のウエーブの髪は、カーテンの隙間から入り込んだ陽光に反射してきらきらと輝いており、あどけない寝姿は、見ている者の心を癒すものであった。
 その姿は日々成長を遂げるにつれ、男を魅了する甘美な対象へと移ろっていく。
 今日、アムネス王国のとある公(こう)爵(しゃく)家のご令嬢アンジェラ・クロフ・キャラハンは十六歳の誕生日を迎える。ついに、彼女が美しい蝶となり、羽を広げる日が来たのだ。
 この日を誰よりも待ちわびていた者が、彼女の寝姿を見下ろす。彼はえもいわれぬ感動を味わい、ため息をこぼした。
『ああ、我が妃(きさき)となる者よ。ようやくだ。この日を待っていたぞ』


     ***


『……その寝姿も愛らしいが、そろそろ目を覚ましてはどうだ。我が妃となる者よ』
(……妃? この声は誰? そこには誰かいるの?)
 夢うつつに身を預けていたアンジェラは、微睡の中、囁(ささや)きかけてくる声の主に耳を傾けた。
『目覚めよ、我が花嫁』
 声はぼんやりとしていた。やがてどんどん近づいてはっきりとしてくる。
(花嫁? お兄様ったら何を言っているのかしら。だめ。まだ眠っていたいわ。重たい瞼(まぶた)が上がらない。もう少しだけ待って、お願い……)
 昨晩、兄のアルバートとチェスを遅くまで楽しんでいた。何度やっても兄には勝てず、アンジェラはむきになって何度も対戦をお願いした。兄は妹の頼みを断れない性質(たち)で、公務が朝早くにあるというのに夜(よ)更(ふ)けまで付き合ってくれていたのだった。
「う、ん……」
 そろそろ起きなくては、アルバートに呆(あき)れられてしまうかもしれない。
 寝返りを打つと、誰かの気配がより近くに感じられ、アンジェラはうっすらと瞼を開く。
「ようやくお目覚めか?」
 静(せい)謐(ひつ)な空間に、さなぎが眠っている繭ごと揺らすような声が届く。聞いたことのない艶(つや)のある低音だ。くすぐったいような、ぞくぞくするような、もう少し聞いていたいと思うような、魅惑的な声(こわ)色(いろ)である。
(……お兄さまって、こんな声だったかしら?)
 アンジェラはようやく瞼を開き、その声の主を見ようとしたが、窓辺からこぼれてくる光が眩しくて、それを避けるように手をかざす。
「ん、ん……おにい、さま……?」
 細い指の合間からこぼれる煌(きら)めきに目を眇(すが)めると、誰かの姿がうっすらと見えてくる。黒いシルエットがちらちらと動いている。やはり傍(そば)に誰かがいたらしい。しかし、兄ではなかった。
「だ、れ……?」
 だんだんと焦点が合ってくると、アンジェラは声の主とおぼしき者を見て、言葉を失った。
「……!?」
 なぜなら、兄……ではない、見知らぬ男が目の前にいたからだ。
「会いたかったぞ。アンジェラ」
「……!?」
 アンジェラは唖(あ)然(ぜん)としたまま言葉を失っていた。
 知らない男の登場だけでも混乱するというのに、この状況といい男の服装といい、彼女の頭の中で疑問符が飛び交う。
 まず、彼の着ている黒い軍服は羽織られているだけだった。上衣ははだけており、筋骨(きんこつ)隆々(りゅうりゅう)とした男の胸板が見えるほど着衣が乱れているではないか。
(な、何……一体、何が起きたの)
 アンジェラはなんとか現状を把握しようとしたのだが、ネグリジェ姿の自分を確認し、ますます混乱を極めた。
 まさか——!
 男に襲われたのかと一瞬青ざめた。しかし何も身体に異変は感じられない。昨晩は兄と遅くまでチェスをしていただけだ。来客をもてなすような茶会や夜会などは開かれていないし、とくに変わったことはなかったはずだ。
 それなのに、どうして——。
「迎えに来たぞ。俺の花嫁」
 肩まで伸びた艶やかな黒髪に、端整な顔をした男は、うっそりと微笑(ほほえ)む。緋(ひ)色(いろ)の瞳は宝石のように美しく輝く。傾(かぶ)奇(き)的な雰囲気をもつその美丈夫(びじょうふ)は、行動は粗野であるのに、相反して高貴な気品に満ちていた。
 アンジェラは眩暈(めまい)がした。それほど、彼はこの世のものとは思えない蠱(こ)惑(わく)的な美しさがあった。
 アンジェラはハッとし、遅れてわいてきた恐怖に駆られ、おもいきり悲鳴を上げようとした。
 しかしそれはすぐに阻止される。
「おっと。それはいけない」
 その言葉が降ってきたのと同時に、男がいきなり覆いかぶさってきて、唇を塞がれてしまう。
 生まれてはじめて口づけされた衝撃に、アンジェラは目を丸くする。
「んーっ! んっ……!」
 アンジェラは必死にかぶりを振り、のしかかってくる男の胸を押し返そうとぽかぽか叩いた。しかし彼には効き目がない。そればかりか、一度の接(せっ)吻(ぷん)で興奮を覚えたらしく、角度を変えながら唇を啄(ついば)んでくるではないか。
 涙目になって必死に身をよじっていると、興がそがれたらしく、男は執着していた唇をようやく離した。
「なぜ、暴れるのだ」
「……あなたこそ、いきなり何、するの! 離れなさいったら」
 アンジェラが足を動かすと、ちょうど男の股間に当たったようで……彼は悶(もん)絶(ぜつ)しながら彼女を涙目で見つめた。
「くっ。美しい乙女がこのようなことを、するとは……」
「早くどいてったら。また蹴るわよ」
 こんなときは怯(ひる)んだら負けだ。なんとか威(い)嚇(かく)して、簡単にはものにならないことを思い知らせなければ。
 男は戦意喪失したらしく、アンジェラから身を引いて、やれやれとため息をつく。
「……まったく情(じょう)緒(ちょ)がない。ゆったりと愛を交わし合う時間を大事にしたいというのに」
「何を言っているの。あなたは誰なの。どうして、私、いつの間に、あなたと……ベッドに!?」
 混乱に混乱を極めながらも、アンジェラは自分の記憶を必死に辿(たど)ろうとした。どこから遡(さかのぼ)ればいいだろうか。頭が痛くなった。
 少なくとも、この男がアンジェラの婚約者のはずはない。
 先日、第三王子サミュエルとの縁談が浮上し、今日はキャラハン家の当主であり外交官を務めている兄アルバートと一緒に王宮内でティーパーティーに参加する予定になっている。
 婚約者候補の話が持ち上がったのは、薔薇(ばら)の花が咲きこぼれる初夏の日、まもなく十六歳となるアンジェラの社交界デビューを数日後に控えたある日のことだった。
 婚約者候補のひとりである第三王子サミュエルは最近まで近隣の国に留学していたため、顔を合わせるのは今日が初めてとなるはず。
 アンジェラは今まで恋をしたこともなければ、誰かと交際したことももちろんない。そんな状況のアンジェラが裸の男と一緒にベッドに入っているなどという状況はありえるはずもなく、夢でも信じられるわけがなかった。
 だいたい、どこからこの男は入ってきたのだろうか。窓を割ったような形跡はない。知らない間に侵入したというのだろうか。
 強(ごう)姦(かん)、誘(ゆう)拐(かい)——そんな物騒な言葉が脳裏をよぎり、アンジェラは顔を真っ青にする。
 男はアンジェラに危害を加えたいわけではないらしい。しかし勝手にキスをされ、花嫁がどうのなどと口走っている。とにかく状況がおかしいことには変わりない。
 早く人を呼ばなくては……呼び鈴に手を伸ばそうとし、怯(おび)えるアンジェラを尻目に、男は悲しげに長い睫毛(まつげ)を伏せた。
「この姿ならば怯えることもないと思ったのだが。まだ俺のことを忘れたままか。おかしいな。契約を違(たが)えるはずなどないというのに」
「契約? あなたは一体……何者なの」
 警戒したまま身を震わせるアンジェラを寂しそうに見下ろし、彼は気だるげにため息をついた。その姿もまた色香に満ちていた。
「俺の名はエルドレッド・アスター・ブラッドバーン。昔、おまえと結婚の約束をした男だ」
「エルドレッド……アスター、ブラッドバーン」
「覚えはないか?」
「ないわ。結婚の約束ですって?」
 ああ、……これはまだ夢の中ということなのかしら。アンジェラは目を擦(こす)ってみた。しかし男が消えるわけではなかった。
「昔って、一体いつの話のこと……?」
「おまえが十くらいのときで、俺が十四の時だった。今から六年前の話だ」
「六年前……」
 誰かと結婚の約束をした覚えなどない。目の前の彼の顔にも名前にも記憶がない。面(おも)影(かげ)を思い出すなどといったこともない。
「短いようで長かった。どれほどこの日を待ちわびていたことか」
 男は熱っぽい眼差しを向けてくる。それ故(ゆえ)にますますアンジェラは戸惑う。
 結論——誰かと勘違いしているのでは?
 アンジェラが本気でそう思っていた矢先に、男の手がネグリジェの上から胸に這(は)わされた。無骨な指の感触に驚き、アンジェラは飛び跳ねた。
「きゃあっ……」
「おまえが美しいのは見た目だけではない。ずいぶんと成長したものだ。予想以上のさわり心地——」
 彼のいやらしい手つきと恍(こう)惚(こつ)とした表情が許せなくて、アンジェラはとっさにエルドレッドをひっぱたいてしまう。彼の頬はたちまち赤みを帯びていく。
「無礼な! 将来を誓い合った夫の頬をひっぱたくとは」
 男はショックを受けたらしい。顔を赤くして憤(ふん)慨(がい)している。アンジェラが怒ることはあってもこの男に怒られる筋合いはない。だんだんと怖いとか不安とかよりも腹が立ってきた。
「夫!? 何言っているの? ぶ、無礼なのはあなたでしょう? 夜這いしてきた挙句に、勝手にレディを押し倒して、許可もなく胸を触るなんて! だいたい誰かと勘違いしているんじゃなくって? 私はアンジェラ・クロフ・キャラハンよ。あ、わかったわ。この二軒先にあるルーズウエル家のミラーさんと間違ったのでしょう?」
 アンジェラがまくしたてるのを尻目に、男はため息をつく。
「俺が間違えるはずなどないだろう。そのような女になど興味はない。お前以外には誰も……」
 男は慈(いつく)しむようにアンジェラの手を引き寄せ、ガーネットの指輪が嵌(は)められた薬指にくちづけをした。
 ぎょっとしたものの、あまりにもやさしい仕草だったから、アンジェラはさっきみたいに即反応できなかった。
「おまえは俺の花嫁になるのだ。これは運命だ」
 さも当然のように男は言う。そんな彼の瞳には情熱の色が灯され、アンジェラの胸の鼓(こ)動(どう)はたちまち騒がしくなる。こんなふうに異性に求められたのは生まれて初めてだった。
「なっ何を言っているの。勝手に決めないでよ」
「まさか、心変わりをしたとでもいうのか? 他に好きな男ができたのか?」
 彼は必死に食い下がった。
「そういうことじゃないわ。勝手に話を進めないで」
「仕方あるまい。これはそういう契約だ。諦めるがいい」
 抱き起こそうとしてくる男から離れようと、アンジェラは後ずさった。まさかこのまま連れ去ろうというのだろうか。男は聞く耳を持っていない様子だ。
「契約……さっきから何を言っているの。これは夢、きっと夢ね?」
「こうまでして、なぜ、認めようとしないのだ」
「と、とにかく……私、もう支度をしなくちゃ。あなたのおかしな茶番にお付き合いしている暇はないの」
 なんとか隙を突いて逃げなくてはならない。
「えいっ」
「ぐっ」
 アンジェラは勢いに任せて男に体当たりしたあと、意表を突かれた彼から離れるべく、ベッドから飛び降りた。
 着地には成功した、と思ったが、みぎゃっと猫の鳴き声が上がる。ベッドの下にいた飼い猫のリュシーのしっぽを踏んでしまったらしい。艶やかな黒い毛が逆立っている。
「わっ。リュシー、ごめんなさい。あなたのことまで巻き込んでしまったわ。今のすごく痛かったわよね? 大丈夫?」
 慌てて抱き上げようとしたところ、まるで巨大な静電気みたいな、パチンという音がした。
 すると、アンジェラの前で、光の粉が瞬(またた)くように輝く。目を奪われている間に、リュシーは十三歳ぐらいの少年の姿に変わっていった。
「——!?」
 アンジェラは驚いて立ち尽くす。しかし一方で、安心しはじめてもいた。
 ああ、こんな魔法のようなことがありえるはずがない、と思ったからだ。
(やっぱり夢の中なんだわ。夢なら早く醒(さ)めてほしい。現実に戻って安心したい)
「お願い。早く、このおかしな夢……醒めて!」
 アンジェラは瞼をぎゅうっと閉じてみる。
 しかし、背後にいた男のもどかしげなため息がこぼれてくるだけだった。
「残念だが、その願いは叶うまい。なぜなら、夢ではないからだ。そいつは俺の下僕だ。契約を交わして以来、我が妃となるおまえの護衛を頼んでいたのだ」
 男の言葉に不安になってアンジェラが瞼を開くと、リュシーに似た少年は粛々(しゅくしゅく)と頭(こうべ)を垂れた。
「僕は、リュシーという名をアンジェラ様からいただきましたが、元々はエルドレッド様の使い魔です。この日を迎えるため、密かにアンジェラ様のお傍に仕(つか)えておりました」
 儀礼的に挨拶をするリュシーに似た少年を、アンジェラは唖然として眺める。それから、部屋を見回した。
 毛艶のよい黒猫の姿を探したが、どこにもいない。部屋のドアは開いていないし、どこにも隠れる場所はないというのに。
 そしてもう一度リュシーに似た少年を見つめた。彼のエメラルド色の瞳に、いつものリュシーの面影が重なる。
「リュシー? 本当にあなたなの?」
 確かめるようにアンジェラは少年に問うた。
「はい」
 少年ははっきりと返事をする。
「一体、どう……なってるの?」
 呆然とするアンジェラを横目に、ベッドにどっかりと腰を下ろした男が険しい表情を浮かべた。
「報告によれば、他の男との縁談が浮上しているようだが、おまえを他の男と結婚させるわけにはいかない。契約はきちんと果たしてもらわねばならぬ」
 憤慨したように男は言い、軍服を着直したあと、長い腕を組んだ。
 契約……それは一体……?
 狼狽(うろた)えるアンジェラの目の前で、男の背中に漆(しっ)黒(こく)の羽が生えていく。完全に形を成したあと、彼はその重々しい翼をばさっと羽ばたかせた。
 ひらりと、黒い羽が一枚舞い、白いベッドへと降りてくる。その様子を見たアンジェラは息を呑んだ。
 ふと、アンジェラの脳裏に、亡くなった父の言葉が蘇(よみがえ)った。
『アンジェラ……悪魔にだけは気をつけなさい。この世の中にはおそろしい魔物がいる。油断をすれば、気付かぬうちに忍び寄っているものだ。よいか? 心に、悪魔を棲(す)みつかせてはいけないよ。悪魔の言うとおりに契約をしてはだめだ。どうか……けっして、違えぬように……』
 父のそれは、死を目前にしたただの譫(うわ)言(ごと)ではなかったということなのだろうか。
 アンジェラはぶるりと身震いをし、喉(のど)を鳴らした。
「あなたは悪魔なの? 私は……知らないうちに、あなたと契約をしていたの?」
 声が、身体が、震える。
「そうだ」
 と、男は即座に答えた。少しもふざけた表情には見えなかった。
「そんな。私は……何と引き換えに、あなたと契約をしたというの?」
 男……否(いな)、悪魔は、いきなりアンジェラの顎(あご)をついっと引き上げ、ひどく愛おしそうに瞳を覗き込んできた。その所作に思わず鼓動が波立つ。とっさによけることはできなかった。
 男は一拍置いて、口を開いた。
「……それは、おまえの記憶だ」
 アンジェラはそれを聞いて、悪魔の緋色の瞳を見つめ返した。
 もしも他の言葉を言われたなら、やはり夢なのだと思い込もうとしただろう。しかし『記憶』と言われて、どうしようもなく好奇心がくすぐられた。
「私の記憶……?」
 碧色の瞳を頼りなさげに揺らすアンジェラを見下ろしたまま、悪魔は目を細める。そして彼女の耳元に囁きかけた。
「興味を持ったか? おまえが記憶を欲するならば、俺はそのすべてを与えてやれる。まずは、俺の花嫁になれ。そうすれば契約は無事に履(り)行(こう)され、新たな契約が交わせる。おまえが知りたがっている記憶を取り戻せる。何も難しいことはない」
 甘い声色にぞくぞくした。まるで脳に直接流れ込んでくるみたいだ。
 彼はなんて甘美な声をしているのだろう。もぎたての熟した果実を食すように、アンジェラはまるで媚(び)薬(やく)のように酔わされてしまう。


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