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自分がオカズにされた回数が見える呪いと紳士な絶倫騎士団長2

木陰侘 / 著
旭炬 / イラスト
ISBNコード 978-4-86669-699-7
サイズ 文庫本
定価 880円(税込)
発売日 2024/08/26

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内容紹介

【相手が自分をオカズにした回数が見える呪い】とおさらばしたラウラだったが、愛する騎士団長・ディルク(絶倫)と熱い一夜を繰り広げたら元通り!? そんなこんなで性癖占い師継続中のラウラの元へ、ディルクの級友だという領主・アルフォンスがやってきて「解呪の遺跡」なるものがあると教えられる。騎士団の公務として遺跡の調査に出かける一行だが――。「君に触れる、俺以外の全てが気に入らない」あらゆる面で規格外のディルクは、嫉妬心のレベルも桁違いでした!? 大人気ラブコメ待望の2巻!

人物紹介

ラウラ・クライン

とんでもない呪いが解けぬまま、「巫女」として祭り上げられてしまって!?

プイプイに好かれまくる。

テオドリック・フォン・クラウゼヴィッツ

思わぬライバル(?)が現れ、ラウラへの執着心はますます深まり…!?

プイプイ

羊のような猪のような謎の神獣。

立ち読み

   第一章 寝台の上では負けかな、と思ってる

「ん……、ん、ぅ……」
 ベッドの上で、窮屈そうに身をかがめてキスをしてくれるのが好きだ。
 初めの頃はこんなに開くものかと恥ずかしかった足はぐったりと寝台に落ちていて、ぴくりとも動かせる気がしない。お腹の奥の奥までぎゅうぎゅうに押し込まれた熱いものがどくどくと脈打つのを感じながら、厚い舌が口の中をかき混ぜるのを、息を切らせながら受け止めていた。
「ラウラ」
「んっ、ぁ、だ、め……、」
 甘い声が私の名前を呼んで、指先が、天井に向かってぷっくりと腫れ上がった胸先をカリカリと引っ掛ける。
「ラウラ」
「んっ、んん……っ」
 大好きな人が蕩(とろ)けそうなほどの甘い声で自分の名前を呼んでくれる。
 それだけで身体の中が焦げるほど感じてしまって、欲望を吐き出したばかりの中のものを貪欲に締め上げてしまう。
「もう一度、か?」
「ちが、っ、あ!」
 大きな掌がお腹の上に置かれると、刻まれた魔力が熱を持って、与えられた役割を実行しようとする。子宮に無数に絡みついた避妊紋の一本一本がめちゃくちゃにされたばかりのところに外側から絡みついて、つま先が敷布の上をかく。
 さっきよりも大きくなったものと、お腹の中を縛る感覚。
(―逃げられない)
 ごつん、と目に抜けそうな衝撃がして、ぱちぱちと火花が散る。
「ああっ、あ、~~!」
 眦(まなじり)を赤くした団長はこれ以上ないほど優しい顔で、絶え間ない絶頂に、あ、あ、と口から芯の通らない声を漏らす私を見つめている。
「君の、その顔が好きだな」
 大きなもので、一番奥の弱いところをぐりぐりと押し付けられて、私の意思とは反対に一生懸命にそれにしゃぶりつく中が酷(ひど)い音を立てている。入り口は何回も出されたものですっかりぐちゃぐちゃで、私と彼との境界線をいっそう曖昧(あいまい)にしていた。
「や、ぁ、! あっ、ああ! ん―!」
 団長は、膝の上に軽々と私を持ち上げると、そのまま激しく私を苛(さいな)み始めた。

      ◇

(…………えっちすぎる)
 目を覚ましたばかりの私は仰向けのまま、呆然と小鳥の囀(さえず)る窓の外を見つめていた。
 掛布の下は全裸である。赤面しつつちらと視線を上げると、頭の下に敷かれた逞(たくま)しい腕が目に入って、さっと目を逸(そ)らした。
 どうも。昨年夏、ローグの森で出会った泉の女神様に『相手が自分をオカズにした回数がわかる』『相手の性癖がわかる』という珍妙な目の呪いに加え、『利き手に触れば相手が直近でオカズにした映像が脳内再生される』という右手の呪いをかけられて、不運な身の上に放り出された人間、ラウラ・クラインです。みなさんお元気ですか。
 あれから九ヶ月、季節は晩冬。なんやかんやあり団長と結婚の約束をして、数ヶ月の遠距離恋愛も乗り越えた私は、引き続き団長のお屋敷にご厄介になっている。
 ―恥ずかしながら恋人関係になって以来、私的な場ではお名前で呼ばせていただいているが、あまり連呼するとこいつ、調子に乗っているな? と思われるかもしれないので、心の中では引き続き団長と呼ばせていただきたい。断じて気恥ずかしいからというわけではない。
 女神様の問題も解消した今、本当は自分の宿舎に戻るべきところなのだが、同棲解消の話になると、なんだかいつもタイミングが悪い。
 季節外れのメエメエ鳥が庭に登場したり、団長がごほんごほんと喉風邪を引いてしまったり、ある時は窓から入ったつむじ風が書類を巻き上げてしまったり。緊急の任務に団長が出かけてしまって、単騎で辺境の野盗を一掃してきたこともあった。
 そんなこともあるのかな……団長はやっぱり忙しいんだな、と思っているうちに、機会をつかめないまま晩冬となってしまった。
 夏至祭からこちら、いろいろなことが起こりすぎて、私の余裕がなかった、というのも原因だ。
 ツェリ様、サシャをはじめとした騎士団内の婚約ラッシュ、ちょっとした遠距離恋愛もそうなのだが、何よりありあまっていたはずの体力が日常生活でごりごりと削られていた。
 そう、ごりごりと。
 誰も見ているはずのない寝室で、また眠っている団長の方をちらりと見上げる。
 同棲生活はそれはもう幸せだった。一宿一飯のお礼ではないけれど、私もお屋敷のお手伝いをしている。
 エドゥアルトさんが教えてくれる料理や帳簿つけ、マルクスさんやマリアンさんにからかわれながらする屋敷の管理はとても楽しいし、毎日団長におかえりなさいを言えるのもすごくいい。
 すごくいいのだが、例の呪いで事前に覚悟していたとはいえ、夜の生活の方については尋常ではなかった。すごい……すごかった……。
 数もさることながら、内容の方もびっくりするようなことばかりが起きる。
 閨事(ねやごと)は未知との遭遇の連続である。他人様の性癖をさんざん覗(のぞ)き見て、しっかり耳年増、ならぬ目年増になったと自負していたが、まさか××を―して、■■が~~に△るとは……。
 世の中の恋愛経験豊富な人というのはとんでもない日々を送っているのだな、と、最近お肌がつやつやしているツェリ様を尊敬の眼差しでじろじろ眺めて、書類作業を二倍に増やされたのもいい思い出である。
 眠る団長の体に向き合うように横向きに寝返ると、腰に巻かれた腕にぎゅっと抱き寄せられる。温かい。
 ちなみにあれほどフリーダムだった私の寝相だが、最近はめっきり大人しくなっている。
 サシャ曰(いわ)く、ありあまっていた体力がごっそり削られているからでは、とのこと。
 相変わらず多忙の団長なので、諸事情で引き続き居候している私と毎日一緒に帰れるわけではないが、平日でも週に三回は一緒に夕食をとれる。
 エドゥアルトさんの話によると、連日仕事で午前様だった頃と比べるとこれは快挙らしい。
 団長が働きすぎていることは、専属事務官である私にとっても前々から悩みの種だったので、それ自体は嬉しい。繁忙期など、私の出勤前には既に執務机にいて、そのまま退勤するまでほとんど釘付けの団長を、昼食時に椅子から引き剥(は)がすのにどれだけ苦労したことか。それが今はおはようからおやすみまで無理をしていないか見守れるので、ありがたいことである。
 一緒に夕食をとった後はお風呂に入ったり、寝巻きに着替えたりで身支度を整えて、寝室で二人の時間を過ごす。楽しいおしゃべりの間にソファで隣り合っていたのが、いつの間にかスキンシップが増え、キスが多くなり、『今日もディルクさんは格好いいな……』なんて、ぽうっとしている間に、服は乱れ、胸ははだけて、唇からあられもない声が漏れていることになる。ほとんど魔法だと思う。
 とにかく、そうなると私は最終的に真夏の道端の蛙(かえる)のごとくぐったりと寝台に横たわり、窓の外の夜明けを眺めるような運びとなる。さようなら、体力。良い奴だった。
 ちょっと回数が多すぎるんじゃないでしょうか……と、言いたくなる時もある。けれど行為後、ちょっと心配になるくらい張り詰めた普段の表情を緩めてにこにこと、私なんかのおでこや肩に口づけしている団長を見てしまうと何も言えない。
 恋人になってからも団長の例のお腰元のカウンターはじわじわ数を増やしている。それを見ると、これでも多少は我慢してくれているのだろうとも思う。
 毎晩与えられる快楽にすっかり依存してしまいそうで怖いのだが、それを除けば、あとの課題は恥ずかしいという部分だけ。
 それに、まだ両方の親に挨拶していないとはいえ婚約(仮)の身の上。団長の家は貴族だし、むしろそういう方面では私が頑張って、将来に備えなくてはならないのではなかろうか。
 ウェルカム房中術。アイワナビー、女豹。リピートアフターミー、女豹(めひょう)。ジャストナウ! 女豹! これである。目標は大きく持ちたいですね。
 団長が寝ているのをいいことに、一人で頷く。
 収穫祭で改めて結婚の約束をした時、団長は私が嫌なら貴族の地位も返上する、継承権を破棄するだけだ、とまで言ってくれたけれど、団長がこれまで積み上げてきたものの邪魔をするのは嫌だ。
 大好きな人には幸せになってほしい。そしてそれは見ているだけで私まで嬉しくなるような、丸い幸せであってほしい。簡単には丸くならないならば私の手でどうにか磨いてみせるまでである。
 いつも誰かのことを考えてしまう団長には、団長のことを一番に考える人が必要だと思う。
 そしてその場所にいられるのはこの先ずっと、できれば私であってほしい。
(私が絶対に幸せにしますからね……!)
 どんな悪者が来ても真っ先に立ち向かってみせる……勝てるかどうかは置いておいて。
 白く貧弱な自分の力こぶに手を置いて、とりあえず明日から腕立て伏せぐらいは始めようと鼻息荒く決意を固めていると、上方から忍び笑いが聞こえた。
「おはよう」
「……おはようございます」
 腕の中をもぞもぞと這(は)い上がって団長に向き直ると、朝から輝かんばかりの笑顔でこちらに向かって微笑んでくれる。
「何を考えていたのかな?」
(ウッ……)
 朝の団長は乱れた前髪がなんとも言えない優雅さで額にかかっていて、ちょっと見ちゃいけないものみたいな素敵な感じがする。今は平気だけれど、いつか法律で禁止される可能性すらあるんじゃないだろうか。判決、素敵すぎる罪(ざい)、とかで。
 誰にも聞こえないのをいいことに心の中でそんなことを考える。団長と一緒にいると思考回路の機能低下がとどまるところを知らない。
(不安だ……今度サシャに相談しよう)
 素敵すぎる罪について相談した親友からは、後に冷え切った眼差しを向けられる羽目になるのだが、もちろん知る由はない。
 私は、掛布の下で団長の大きな手を見つけだすと、首尾よく胸の前に引っ張り上げたそれに両手の指を絡ませた。胼胝(たこ)の目立つごつごつとした手。私の大好きな手だ。
 夏至祭の一件で言葉にしないから色々な誤解を招くのだ、と学んだ私は、以来考えていることを正直に口にするようにしていた。
「ディルクさんのことを、幸せにするにはどうしたらいいだろうって、考えてました」
 虚を突かれた様子で固まる団長。
 ちょっと気障すぎただろうか。照れと羞恥が襲ってきて、早口に言い切ってしまうことにする。
「それで、えっと、毎日こんなに幸せなら、いいですねって」
 朝、一番初めにおはようと言う。
 毎日一緒にご飯を食べる。
 今日の出来事を話して、おんなじ生き物みたいにぴったりと抱き合って眠る。
 手の触れる距離に大好きな人がいて、こんなふうに自分の気持ちを正直に口にできるのは、本当に、幸せって感じがする。
「なんて、言ってみたりして……、んっ」
 いよいよ恥ずかしくなってごまかそうとした私に団長が口づけをする。額、眦、唇と軽く触れられて、あっという間に頬が熱くなる。
「んっ……、ぁっ、」
 どんどん深くなるキスに反射的に目を細める。唇を吸われて、上顎(うわあご)の弱い部分をくすぐられる。大きな掌が腰の上を這い、昨夜の残(ざん)滓(し)を拭い去る魔法がかけられた気配がした。
「は……、ふ、だめ、んんっ……、だめ、です」
 これはまずい流れだと、最近学習しはじめた私はぐったりとしてきた腕で団長の肩を押し返す。あっ! 胸が……! 私の胸がいつの間にか掛布の外にまろびでている。いつの間に!
「だめ?」
(う……)
 聞き返されると、困る。
「駄目です」
「何が駄目?」
「…………」
 両頬にまたキスを落とされて押し黙る。団長のこういうところはずるいと思う。
「…………昨日も、たくさんしたので」
「口づけを?」
 そう言われてみると、キス一つでいかにもその先を期待していたようで恥ずかしい。
 ひょっとしたら団長にはそんな気なんかなかったのかもしれない。私ときたら、なんて恥ずかしい。
 とりあえず、勢いでぽろりしてしまったらしいおっぱいだけでもしまっておこう。我が胸ながら寒そうだ。
 そう思って、掛布を引っ張り上げようとしたのだが、次の瞬間あっさりと剥ぎ取られてしまった。
「え? って、うわ、わわわ!」


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