書籍詳細
ケダモノ彼氏に捕食されました
ISBNコード | 978-4-908757-19-8 |
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サイズ | 文庫 |
定価 | 713円(税込) |
発売日 | 2016/08/05 |
レーベル | チュールキス |
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内容紹介
人物紹介
深瀬七海
出版社秀創社の総務部に勤めるOL。
ひょんなことから編集部の助っ人として桧山の担当に。
桧山誠
ゲームのキャラクターデザイナー。
大勢のゲームファンだけでなくその容姿から女性にも絶大な人気がある。
立ち読み
「んっんっ、あっ、ぁああっ」
爪先から何かが込み上げてくる感覚に、七海は顔を大きく左右に振る。
瞼を強く閉じているため、視界は真っ暗だ。それなのに、闇がだんだんと白みがかってくる感覚がした。
何かがくる。
そんな感覚に迫られた瞬間、花芽を強い衝撃が襲った。桧山の歯が軽くそこに触れたのだ。刹那、七海は大きく目を見開き、身体を弓なりに反らせた。
「あっ、んっ……あああぁっ」
びくんびくんっと身体を何度もバウンドさせ、初めての絶頂を迎え入れる。
苦しくて、気持ちいい。どこかに放り出されるような感覚がするのに、それを与えてくれた愛する人はすぐ傍にいる。
荒波が去り、それらの矛盾に不思議な気持ちで身体を震わせていると、上気した七海の頬の上を桧山の唇が滑り出した。
「んっ、まだ、だめです」
唇が肌を掠めるだけでも、身体が弾んでしまう。むずがる子供のように身を捻り、力なく握った拳で桧山の肩を叩く。
もちろん、なんの抵抗の効果もない。むしろ、桧山を喜ばす結果となってしまったようで、耳元では愉快そうに喉を鳴らす声が聞こえてきた。
「そろそろ指だけじゃなく、俺も迎え入れてほしいんだが?」
愉快げな声の中に、確かな熱情が込められている。
この先に進むのは、ほんの少し怖い。けれど、彼にも気持ちよくなって貰いたい。何より、自分の全てを与えたい。
そんな思いで七海は小さくうなずき返した。
「わっ、私も、……ほしいです」
まさか、直接的な回答が貰えるとは思わなかったのか。桧山は珍しく驚いた顔をした後、口元を手で覆い隠した。
「先生?」
そっぽを向く桧山を見て、何かを間違ってしまったのかと心配になる。
思わず呼び名を元に戻してしまうと、桧山の瞳がゆっくりと自分に戻ってきて小さく睨まれた。
「いろいろ忠告してやったはずだが、お前の学習能力のなさは筋金入りだとよくわかった」
「え? きゃっ」
言い捨てるなり、足を再度ぐっと開き、右手で七海の左の太腿を肩に担ぎ上げる。そのまま尖らせた舌でつっと白い肌を舐め、強く吸い上げた。
「駄目です。痕が残っちゃう」
「俺以外、誰も見ないだろう? 他の奴が見るなんて、そんなことは許さない」
強い瞳に射抜かれ、宣言される。同時に、前方に身体を倒してきた桧山に唇を塞がれた。
「ふっ、んっんっ」
奪うようなそれではない。舌先を触れ合わせ、まるで七海を誘っているかのように蠢く。
対して、七海も桧山を喜ばせようと懸命に自分から舌を絡ませた。
ぴちゃぴちゃという互いの舌が奏で出す音。その合間に、金属音や布の擦り切れる音が聞こえてくる。
やがてそれらがやむ頃、逞しい腕が七海の身体を抱きしめた。
ぴったり寄り添う互いの体温に、何も身に纏わず抱き合えることの幸福を思う。
「怖いか?」
七海の身体がその意志とは関係なく震え出す。それは未知なるものへの恐怖でも、桧山が向けてくる情欲に対して怖気づいたのでもない。
歓喜に似た思いからだった。
軽く首を振って否定すると、桧山は目を細めておもむろにベッドの端に手を伸ばす。そしてチェストから取り出した小箱を手に準備を済ませると、再び七海の上に覆いかぶさってきた。
「痛かったらちゃんと言えよ」
忠告してから、すぐに蜜口に熱い塊が押し当てられる。右手を使って楔の先端に蜜をまとわせるように動かした後、桧山はゆっくりと七海の中に押し入ってきた。
「ッ」
指とは比較にならないほどの圧迫感。めきめきという音が頭の中で鳴り響く。そこが裂けてしまうのではないかとすら思えた。
駄目だ、悲鳴を堪え切れない。
血の味がするほど唇を噛みしめても、僅かな隙間から声が漏れ出そうになる。
痛みに耐えられず目を開くと、次の瞬間、一瞬だけ痛みが吹き飛ぶような感覚がした。苦悶の表情を浮かべた桧山が見えたからだ。
こういう時、男性も痛みを感じるものなのだろうか。だとしたら、自分はどうすれば彼を救うことができるのか。
七海はみしみしと悲鳴を上げる身体に鞭を打つように、掠れた声で囁いた。
「痛い、ですか?」
眉間に指を当てて問いかける。すると、桧山は苦笑いを零し、親指で七海の唇を摩った。
「馬鹿、それはお前だろ。俺はその逆だ」
痛いの逆。それはつまり気持ちいいということだろうか。
疑問に思った瞬間、全身に強い衝撃が駆け巡った。
「悪い」
「痛っ!」
ずんっと一気に身体を串刺しにされた衝撃に、七海は悲鳴を上げる。
強い痛みはほんの一瞬で過ぎ去ってくれたが、ずきずきと身体の芯から響いてくる鈍痛が絶えず襲ってきた。
「七海、ちゃんと呼吸しろ。その方が辛くない」
奥深くまで繋がった体勢のまま、桧山が優しく七海の頬を叩いて助言する。素直にそれに従うと、確かに少しだけ痛みが遠のく感覚がした。
呼吸が整った頃合いで、七海がうっすらと瞳を開ける。
優しい瞳に映し出されるのは、今日だけでももう数えきれないほどだ。でも、まだ慣れない。
この瞳に慣れて、愛されることにも慣れる日がくるのだろうか。答えは誰にもわからないけど、その答え合わせがいつかの遠い未来にできればいい。
そう思い、七海はそっと微笑んだ。
「あの、もう……」
言わんとしていることは伝わったのか。桧山が掠れた声で問いかけてくる。
「本当に大丈夫か?」
「せんせ、誠さんは心配症ですね」
それは自分の専売特許にして貰いたい。努めて明るく言うと、桧山は目尻を上げた。
「覚悟しろよ」
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