書籍詳細
姫君は新王の執愛に包まれる
ISBNコード | 978-4-86669-105-3 |
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サイズ | 文庫 |
定価 | 754円(税込) |
発売日 | 2018/05/16 |
レーベル | ロイヤルキス |
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内容紹介
人物紹介
テレジア
ゼーラント国の王女。人質となってしまう。
リヒャルト
半年前即位したラインラントの新王。
立ち読み
第一章 過酷で甘美な再会
「——あ、ぁッ。そ、んな……」
切ないあえぎ声が、夕暮れの、ほの暗くなった部屋の中、密やかに響いていた。
「や、ッ……。やめ、て……」
ゼーラントの王女テレジアはかぶりを振って身悶えた。隣国ラインラントの新王、リヒャルトの力強い腕に抱きすくめられた状態で、身動きもままならない。主のいなくなった国王の寝室には、今、二人の他は誰もいなかった。
まとっていた簡素なグレーのドレスは、とうの昔にテレジアの身体からはぎ取られ、シュミーズやコルセットと一緒になって足元の床に落ちている。靴も脱がされ、テレジアは今、生まれたままの姿だった。一つに編んでいた金髪もほどかれ、その身体に波打ってふわふわとかかっている。それ以外は身体を覆うものは一切ない。
それだけでも十八歳の、まだ乙女のテレジアにとっては恥ずかしくて消え入りたい状況なのに、あろうことか、露わにされたその肌には今、男の手が這い、思いのままに翻弄している。
男——リヒャルトの手が淫らな動きをするごとに、テレジアは身体の奥底から、ひどく心地よい、痺れを伴う感覚がこみ上げてくるのを抑えることが出来なかった。こんな経験は初めてで、それにいきなり全身を支配するかのような強い快感を与えられ、テレジアは心も身体も、自分のものでなくなってしまったかのような感覚に陥っていた。
「——まだ、口を割らぬか」
その時、耳元でリヒャルトの冷ややかな、酷く苛立った様子の声が囁き、テレジアはすくみ上がった。
「酒も、塗った媚薬も、もう全身に回っているだろう。お前の身体はこんなにも感じているというのに」
次の瞬間、耳たぶに軽く歯を立てられる。とたんに新たな快感がジンと全身に走り、テレジアは青い瞳を見開き、息を呑んだ。唇から甘い声が漏れそうになるのを懸命に唇を噛み、かぶりを振って堪える。
そんなテレジアの反応を凝視し、それから顔をしかめたリヒャルトは、いきなり抱きすくめた彼女ごと身体の向きを変え、再び囁いた。
「強情な王女だ。——そら、見てみろ」
「え、……!」
絶え間なく続く甘美な責めに耐えかねて、うつむいていたテレジアは、その言葉に思わず顔を上げ、絶句した。
寝台のすぐ近くの壁には、全身が映る大鏡が取り付けてあった。縁に繊細な金細工の彫刻がぐるりと施された、贅沢なものだ。その中に、夕日に照らされて、一糸まとわぬ自分の姿がはっきりと映し出されている。
——なんて、淫らな格好……!——
さらにテレジアの大きな青い瞳は見開かれて潤み、頬は上気し、通った鼻の鼻孔は僅かにふくらみ、小さくふっくらとした唇は半開きになって乱れた吐息を漏らしていた。テレジアは、自分の顔がこんな風に快感をあらわにするところなど見たことがなかった。それは、全裸と同じくらい酷い姿に見えた。
そんなテレジアとは対照的に、リヒャルトは軍服を隙なく身につけたままだった。皮肉なことにそれがさらに、テレジアの白い肌を際立たせている。
黒の上下の地に、胸元には金糸で刺繍されたラインラント王家の紋章。そして同じく黒地に金の刺繍入りのマントも外さないままである。その黒ずくめの姿は、少し流した黒髪と黒い瞳、日に焼けた肌、そして高く鼻筋の通った端正な容姿の彼にこの上なく似合っていた。テレジアより三歳年上だから二十一歳の筈だが、それよりもさらに上に見える。
「母譲りの美貌が、あられも無い格好で一層魅惑的だな……」
そんなリヒャルトに、耳元で囁かれる。リヒャルトもテレジアを凝視していた。母、という言葉にテレジアはびくんと身を竦ませた。リヒャルトとテレジアの母、そしてテレジア自身との不幸な経緯を思い出したからだ。そしてそれは、今の事態を引き起こす遠因だったかもしれない。
リヒャルトは今、テレジアを背後から羽交い締めにし、彼女の両方の胸を捕らえ、その手で思いのままに翻弄している。
——それはまさに、この国の現状を表しているかのようだった。
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