書籍詳細
許婚同盟! 彼と私の共同戦線
ISBNコード | 978-4-86669-159-6 |
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サイズ | 文庫本 |
定価 | 754円(税込) |
発売日 | 2018/11/05 |
レーベル | チュールキス |
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内容紹介
人物紹介
松永萌香(まつながもえか)
街の洋菓子屋の娘で、製菓会社に勤める平凡OL。高校時代に礼一と『許婚同盟』を結ぶ。
芳賀礼一(はがれいいち)
芳賀ホールディングスの御曹司。幼馴染の萌香をどう囲い込んでおくか常に考えていたが……。
立ち読み
いつか、離れるのが前提だと思い込んでいた。
いや、今だって……彼の言葉の裏を探り出そうとしてしまう。責任感だけではないのか、とか。彼の祖父を喜ばせたいだけではないか、とか。
たぶん、なんらかの情はあるのだろうけれど、恋愛的なそれをとっくの昔に通り越してしまって、ただの家族の情に似たものになっているのではないか、とか。
今日、岡野と顔を合わせていなかったら、きっとこんな気持ちにはならなかっただろう。
——言えるはず、ないんだけど。
むしろ、彼の一番側にいるという立ち位置を誰にも譲りたくなかったのは、萌香の方ではないだろうか。
「……ちょっと嫌かも」
ちょっと嫌——なんて言葉だけでは片付けられない気もする。だけど、彼のことでやきもちを焼くのは許されるんだろうか。
こてんと彼の肩に頭を乗せて、嫌かも、と繰り返す。
「嫌ってことは、妬いてる?」
「妬いてない。けど、イヤ、かも」
妬いてるなんて認めない。嫌なのは事実だったからつい口から零れたけれど。
——嫌だな。
自分がたいした人間ではないということがわかっているから、こんなにも苦しくなるんだろう。
「——本当に?」
ぐいっと彼がこちらへと身を乗り出す。負けそうな気がして視線をそらした。
「俺は、妬いてくれた方が嬉しいけどな」
何気ない仕草で、ひょいと肩を押される。完全に油断したから、されるがままにソファにひっくり返ってしまった。
ソファが小さく軋んで、見上げればすぐそこに彼の顔。妬いたら嬉しいって、本当だろうか。
「じゃあ、妬いちゃおうかな」
甘えた口調で返して顔を上げる。こうやって、礼一と一緒にいられればそれでいいのだと自分に言い聞かせる。
「……んっ」
唇を重ねるキス。先に唇を開いて誘いをかけたのは萌香の方だった。
開かれた唇の隙間から、彼の舌が我が物顔で中に入り込んでくる。
「あっ、あっ」
漏れる甘ったれた声にも、いつの間にか馴染んでいた。彼の前でだけ響く、他の人には聞かせない声。
そんな自分の声でさえも、意識の外に追いやられる。
性急にシャツのボタンが外される。一つ、二つと外される間も、深いキスは続けられて。
舌が取れてしまうのではないかと不安になるくらいに、力を込めて吸い上げられる。
「んんっ……ふっ……あっ……」
ソファの背もたれに押しつけられた背中が少し痛い。痛いはずなのに、それさえ、快感に上書きされて息が詰まりそうになる。
ボタンが全開にされて、中に着ていたキャミソールに手が潜り込んでくる。
今日の彼は、どうしてここまで性急なんだろう。
乳房を覆われ、そのまま円を描くみたいに揺さぶられる。こんなところで、と頭の隅の方で考えるけれど、それを押し流す快感の方がはるかに大きい。
「れい、くん……?」
うっすらと目を開けば、すぐそこに彼の顔。彼のこんな顔を見たことなんてなかった。
明るい中で触れられるのは初めてのことで。萌香としても羞恥心が芽生えてもいいはずなのに、それよりも強い衝動に突き動かされているみたいだ。
「俺、今、すごい余裕なくしてる」
少し、照れたみたいな口調で彼が言う。彼が余裕を失っているのなんて、やっぱりすごく珍しいと思う。
「——だから、手加減してやれないと思うんだ」
「ひぁっ!」
首筋に強く吸い付かれて、妙な声が上がる。
ちりっと走った鈍い痛み。さらに吸い上げられて、たぶん、痕がついたんだろうなとぼんやり思う。
「俺の、もの。赤くなってる」
今、彼が口づけたところに指が押し当てられる。
「……困る。見えちゃう……」
「襟のついた服を着ていたら見えない位置だから大丈夫だよ」
その言葉と同時に、また胸が揺らされる。彼の手の中で、下着越しに揉まれるその感触がもどかしい。腰の奥の方に快感の波が揺蕩い始めて、じれったくなってくる。
「大丈夫じゃない……! 困る……」
眉尻を下げて、困る、と繰り返した。
こんな風に痕をつけられたら——誰かに見つかった時にどう言い訳したらいいんだろう。誰も追及してこないかもしれないけれど。
「本当は、このあたりにつけたかった」
「あんっ!」
首の中ほど、襟のついた服を着ていても隠せないであろうところに唇が触れる。本当にその場所を吸われるんじゃないかと思って身を捩った。
「つけないよ、見えるところには」
逃げ出す気配を素早く感じ取ったらしく、萌香を絡めとる腕に力がこもる。
「ここで我慢したんだから、俺は褒められてもいいと思う」
「ほ、褒めるって……あんっ」
キス、キス。また、キス。
喉の無防備な皮膚を全てキスで覆おうとしているみたいに唇が触れては離れる。
その度に萌香はびくびくして、押しのけようとしていたはずなのに、彼の首の後ろに手をかけて自分の方に引き寄せてしまう。
「んぅ……も、や、あ」
背中をしならせたら、その動きを利用して背中のホックが外される。本当に手際がいい。
締め付けから解放された胸がふるりと揺れる。
「い、あっ!」
硬くなり始めた胸の頂が手のひら全体で刺激された。指や舌で与えられる細やかな快感とはまた違う感覚。
動かすつもりもないのに、足がばたばたと揺れてしまう。
「今日、変……」
「萌香が妬いてると思ったら俺の理性どっかにいった」
「り、理性って……ぁんっ」
また、手のひらで胸の頂が擦られる。
萌香の方もずいぶん過敏になってしまっているみたいで、彼の与える快感に手や足がびくびくと跳ね回る。
「……今、こうしているのはまずいって頭ではわかってるけど、気持ちの方は止まらない。本当は、ちゃんと家に送るべきだろ?」
「んっ、んんっ」
そんなことを言いながら、胸の頂を指で捏ねまわすのはやめてほしい。首を振って快感に耐えようとするけれど、与えられる快感に萌香が耐えられるはずもなかった。
「だって」
——だって、寂しかった。
寂しい、と感じるなんてどうかしている。
数か月単位で顔を合わせない時期もあったのに、今は二日三日会えないだけで、こんなにも胸が苦しくなる。
だけど、その先は言葉にならない。下着が首の方へと捲り上げられて、肌が室内の空気にさらされる。
「——可愛い。それに、綺麗だ」
頭の奥の方で、今日の下着は大丈夫だっけ? と考え始めるあたり、まだ少しだけ余裕が残っていたのかもしれない。
上がりかけた嬌声を、唇を強く引き結ぶことで押しとどめる。片方の胸を手のひら全体でこね回され、もう片方の胸には唇が触れる。
柔らかな場所のいたるところにキスが降らされて、そのまま先端の方まで上ってくる。息もつかせず、先端が温かいものに包まれたら、足の先まで甘い痺れが走り抜けた。
もっと強く触れてもらえないのがもどかしい。物足りなくて、身体が揺れる。
ソファの背もたれに後頭部を押し付けるみたいにして背中をしならせた。
「……ごめん。今日は、あまり優しくできないかも」
優しくなんてしなくていいと言葉にしたかったはずなのに、口から漏れるのは喘ぐ声だけ。交互に胸の頂が舌で弾かれて、その度に肩が跳ね上がる。
「大丈夫……痛くしなかった……ら……」
「痛くなるくらい乱暴にはしない。いつも大事にしてるだろ」
「はうっ……それは、痛い——」
今度は鎖骨のちょっと下を強く吸い上げられた。痛いというほどでもないけれど、ぴりっとした感覚が走り抜ける。
「そうか? でも、ここにも俺の痕がついた」
場所が場所なので、どんな痕がついたのかは見ることができない。
だけど、彼の独占欲みたいなものを見せられるのは、ぞくぞくする。
「はっ……ん、あぁぁ……」
腰をもぞもぞとさせたら、スカートが捲り上げられた。
スカートの中に、彼の右手が忍び込んでくる。そうしておいて、腿の内側を思わせぶりに撫でられたら、また吐息が零れた。
「んぅ……も、う……」
これ以上、我慢するのは正直なところ難しい。腰をくねらせるみたいにして、これから先のもっと強い快感をねだる。
「私、も……」
自分からも彼に触れたいと思った。
華奢な萌香とは全然違うしっかりとした彼の身体。その身体に手を這わせて、うっとりと感触を味わう。
ちゅっと額にキスされると、そこから甘ったるい感覚が広がる。額にキスされただけなのに。
「お前、俺の自制心試してるだろ」
「そんなことない……から」
会社帰りだから、ワイシャツにネクタイなのがいつもと違っていてかっこいいなとか。そんな彼が萌香に向かって欲情しているみたいに見えるのがぞくぞくする、だとか。
そんなこと絶対考えていない——と自分に言い訳をする。
「——お願い」
ネクタイを不器用に引っ張りながら懇願する。もっと彼が欲しい。
なんでネクタイってこんなに解くのが難しいんだろう。
今まで自分でネクタイをしたことなどあるはずもないので、結び目に手をかけたはいいけれど、そこから先どうしたものかわからない。
結び目に指を入れて解こうとしても、まずその結び目に指を入れるのが難しい。
「……こうしたら、早いだろ」
くいっとネクタイを引っ張って緩める姿がものすごく色っぽい。そんな彼の姿を見るのは初めてだったから、身体の奥の方からぞくぞくとしたものが這い上ってきた。
「……ボタンも」
震える手を伸ばして、ワイシャツのボタンを外す。上から二つ外したら、ますます彼の色気が増したように感じられた。
「——そこまで」
彼の鼻先が、首と肩の境目あたりに擦り付けられる。キスされると思って身構えたら、また腿の内側を撫でられて力が抜けた。
「萌香は、俺の理性に期待し過ぎ。そんなの簡単に消えてしまうんだから、あまり俺を煽ったらだめだろ」
なんて責任転嫁なんだろう。煽ったつもりなんてまるでない。
だけど、腿の内側を往復する手はあまりにも思わせぶりで、もう一つボタンを外そうとしていた萌香は思わず彼のシャツを握りしめる。
「だけど……でも……んっ……ぅ……」
爪の先で、脚の付け根あたりがくすぐられる。そこから広がる愉悦。なんてことない刺激のはずなのに、甘ったるく痺れた身体は、萌香の言うことを聞いてくれなかった。
「や、だ……も、や、だぁ……」
回らない口で懸命に訴えかける。こんな風に思わせぶりなことをされ続けたら、もっととんでもないことを口走ってしまいそうで怖い。
身体に半端にまとわりついている衣服も、快感を煽る一因でしかない。ストッキングが慎重な手で引き下ろされる。
ショーツの脇から指が潜り込んできて、くちゅりとその場所が音を立てた。途端、広がった甘美な感覚に、腰をくねらせてその先をねだってしまう。
——それなのに。
「——どうする? ここでやめるか」
「……や、だ」
どうする、なんて聞いているくせに、彼だって余裕がなくしているのはこちらにもわかる。
萌香の目をのぞき込んでくる目にも、欲情しているとしか言いようのない光が浮かんでいるから。
「あうっ……ん、あっ——あぁっ」
濡れた場所に指が潜り込む。浅いところをかき回されて声が上がる。
もっと、奥。指では届かないところを刺激してほしい。
ソファに押しつけられた窮屈な姿勢のはずなのに、少しでも奥に指を招き入れようとして腰が浮き上がる。
「そうだな、これじゃやめようがないな。このままじゃ帰れないだろ」
わかっていてそうやって言葉にしてくるのだから、本当に質が悪くて意地悪だ。
懇願する声は言葉にはならなくて、媚びるみたいな喘ぎ声ばかりが響く。
中で指が蠢いている。奥から溢れてくる蜜を残さず掬い上げようとしているみたいに。
「——帰れない、から」
羞恥で睫毛が震えているのに彼は気づいているんだろうか。ショーツの中で窮屈なまま動いていた指が一段奥へと押し込まれる。
「んぁぁっ!」
中で天井を擦り上げるように指が動かされた。また、嬌声が部屋の空気を震わせる。
二人しかいない室内で、どこまで声が響いてしまうんだろう。
「はっ……んぁぁっ」
だめ、と口走りそうになって、強く唇を結んだ。
だめ、ではない——いい、の方が正解だ。
抜き差しされる指の動きに合わせるように身体をくねらせる。
もっと、奥、もっと、先。もっと、強い快感が欲しい。
自分からより大きく脚を開いて、気持ちいい箇所が刺激されるように身体を揺らす。
目の前が白くなって、瞼の裏に星が散る。
あと少し、もう少し——。
下腹部から広がった愉悦が、体中を走り抜けて、手足の先まで痺れさせる。
中で蠢く指。耳や首筋に這わされる舌。ありとあらゆるところから広がっていった快感に自分でもどうかしているのではないかと思うくらいの艶めかしい声が上がる。
窮屈な姿勢で押しつけられたまま肩を震わせて絶頂に達したら、中が一段と強く指を締め付けたようだった。ずるり、と指が引き抜かれる感覚に、萌香の口から失望の声が零れ落ちる。
するりと足先からショーツが抜かれた。腰のあたりまでスカートが半端に捲れ上がっているけれど、それを気にしている余裕はない。
萌香を片方の手でソファに押し付けたまま、もう片方の手でせわしなく彼は衣服を緩めていく。片方の手でベルトを外したら、そのまま下着の中から自身を取り出した。
それはいつでも挿入できるくらいにすっかり硬くなっていて、不意に萌香は気づく。
ここには避妊具がない——と思ったら、彼のパンツのポケットから都合よくそれが出てきた。本当に準備がいい。
「……あっ」
脚の間にそれがあてがわれて、期待に満ちた声が漏れた。恥じらいなんて、簡単にどこかに行ってしまうものらしい。
自分から招き入れるみたいに腰を揺らめかせてしまって、今さらながらいたたまれないような気分に陥った。
「ん、どうしようか。このまま?」
「それは、いや」
先端で濡れた箇所を刺激しながら、彼が問う。彼の方も、このままでいられるはずなんてないのに。
一枚の薄い膜を隔てて、彼がゆっくりと押し入ってくる。ソファの端に追い詰められて、片方の脚が背もたれに乗りそうなくらいに押し上げられる。
「ん——きついな」
こうして触れ合うのが久しぶりだから? いつもより彼が大きく感じられる。
息を詰めて、そこから先を待つ。
「……あ、ん……でも……」
服を着たままこうやって絡まり合うのは未経験だ。
部屋の明かりが点いたままであることも、ここがソファであることも興奮を煽る一因なのかもしれなかった。
一度引いた彼が、最奥まで一息に突き上げてきた。途端、広がる喜悦。響く嬌声。
背もたれに押しつけられていた頭がずるりと肘置きまでずり落ちる。
「あっ、あっ、あぁっ!」
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